2008 Fiscal Year Annual Research Report
高精度電子移動理論による導電性DNA分子モデリング設計
Project/Area Number |
08J10066
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松井 亨 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 金属含有DNA / 人工DNA / 電気伝導度計算 / 量子化学 / DNAのプロトン移動 |
Research Abstract |
近年DNAに類似した塩基と糖・リン酸のバックボーン分子を持つ人工DNAの合成が注目を浴びている。2003年に田中らによって、[H-Cu2+-H](H:ヒドロキシピリドン)を5個並べた銅イオンを含む人工DNAのduplexを合成できることが報告されている。このような金属イオンを含む人工DNAの塩基対間の安定性にはどのような相互作用が寄与するのかについては具体的な議論がなされていない。そこで、本年度の研究においては[H-Cu2+-H]二量体における最安定構造での銅イオン間の距離と相互作用エネルギーを導出することを目的とした。 今回は面を通常のDNAと同様に36度回転させたうえで面間距離を変えてその各点におけるエネルギーを計算した。Cu-Cu間の距離は相互作用エネルギーの極小を与える構造から判断するとおよそ3.60-3.65Åと計算される。面間距離以外は固定しているため、鋼イオンが横にずれる効果を考慮しても3.7±0.1ÅとしているEPRから得られた実験の結果と大変よい一致を示している。また、スタッキングエネルギーは9.1kcal/molとなった。通常のDNAと同様にスタッキングで安定する[H-2H+-H]においてもその傾向は大きく変化しておらず、スタッキングエネルギーも9.5kcal/molとなっていて[H-Cu2+-H]の場合と大体同じ値になっていることから、人工DNAにおいても塩基対間ではスタッキングが安定化に寄与していることが分かった。 次にスピン状態について考察する。EPRの結果から、[H-Cu2+-H]二量体のスピン状態は三重項が安定となるはずである。スピンを考慮した二量体について一重項と三重項で計算を行った結果、一重項と三重項のエネルギー差は殆どなく物性や電子密度も同じ値を示していることから、[H-Cu2+-H]が持つスピンは独立して存在しうることが示された。
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Research Products
(4 results)