2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J10127
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桑田 学 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 持続可能性 / エコロジー経済学 / 自然資本 / 人工資本 / 福祉 / 主観主義 / 客観主義 / 市場 |
Research Abstract |
現代のエコロジー的危機の源泉は一部には市場的規範の地理的=空間的な「外延的拡張」と「内包的深化」にある。しかし、現代の主流的な環境言説に見られる経済学的アプローチには、環境財の貨幣的評価や費用便益分析、あるいは環境財の私的所有化などに見られるように、市場的な思考習慣が深く浸透しており、むしろこの傾向を強化するよう働いている。そこで、本研究では、持続可能性(sustainability)をめぐる経済学研究において共有されたいくつかの基礎概念を析出し、それらへの批判的検討を踏まえ、主観主義的な効用概念や資本理論に基づく従来の持続可能性解釈に潜在する理論的欠陥の解明を課題とした。持続可能性への経済学からのアプローチは決して一枚岩ではなく、各学派が異なる枠組みの下で持続可能性の独自の解釈・定義を与えようと試みてきた。とくに人工資本と自然資本という2つの「資本」類型間の代替可能性をめぐって論争が生じ、「弱い持続可能性」と「強い持続可能性」という2つの規範モデルへと帰着するに至っている。だが、いずれの解釈でも、持続可能性概念を定式化するにあたって、(1)その最終目的を資本ストックから引き出される財・サービスのフローを通じた将来に亘る人間の厚生水準の維持と措定し、(2)自然・生態系が提供する多様な便益の理論的把握のために、それを資本タームで概念化する、という類似した論理構成が見られる。実際、持続可能性をめぐる経済言説に現れる諸概念・諸範疇-人工資本、自然資本、代替性(substitutability)、厚生(welfare)、福祉(well-being)等々-がそれぞれ具体的に何を含意したものかはそれほど明確でない。本研究では、これらの基礎的な諸概念や概念相互の関係を改めて精査するとともに、強い持続可能性の規範理論の基礎づけを試みた。
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Research Products
(2 results)