2008 Fiscal Year Annual Research Report
ミツバチ脳における幼若ホルモン代謝酵素を介した分業調節機構の解析
Project/Area Number |
08J10151
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宇野 佑子 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ミツバチ / キノコ体 / カルシウムイオン / 分子生物学 / 昆虫 / プロテオミクス / 幼若ホルモン |
Research Abstract |
ミツバチは社会性昆虫であり、働き蜂は幼若ホルモンに依存した齢差分業や「ダンスコミュニケーション」に代表される高い記憶学習能力を持つ。私はミツバチで高度に発達した脳領域「キノコ体」がミツバチの行動や高い能力と深く関連していると考え、キノコ体選択的に発現しているタンパク質の網羅的解析によりミツバチキノコ体の特徴付けを試みた。その結果、キノコ体選択的なタンパク質スポット4つを新規に見出し、すべて同定した。同定された結果、因子は以下の2つの因子群に大別されることが判明した。(1)幼若ホルモン代謝・合成酵素、(2)カルシウム結合タンパク質。 以上の結果からキノコ体がミツバチの分業を制御する幼若ホルモン情報伝達系の作用点である可能性が初めて示唆される。さらにカルシウム結合タンパク質だけでなく、カルシウム放出チャネル遺伝子もキノコ体で亢進していることも見出し、神経可塑性のベースとなる小胞体のカルシウム放出に関わる因子が協調的に亢進していることは、昆虫においても記憶・学習にカルシウム情報伝達系が重要であることを指摘している。 他の昆虫の脳のキノコ体でこれらの因子が亢進しているといった報告はなく、これらの因子の亢進がミツバチ特異的な行動に関わる可能性が考えられる。一方、得られた因子のなかには、幼若ホルモンとカルシウムイオン濃度調節双方に関わる因子もあり両者の情報伝達系が連関している可能性も考えられる。以上の結果から、本研究はミツバチの高い記憶・学習能力がこれらの因子の亢進と関連している可能性を初めて指摘し、昆虫の神経機能の進化を知る上で非常に重要な発見であると考えている。
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