Research Abstract |
底泥の主要毒性要因を特定するWhole-sediment TIEの,既存の有害化学物質分画手法である吸着剤添加法を,カイミジンコ底質毒性試験を用いて都内河川底泥に適用したとき,陽イオン交換樹脂であるChelex及びZeoliteによる毒性増加と,どの吸着剤によっても毒性が低減しない底泥がみられたため,これらの原因解明と手法改良を検討した。Chelex及びZeoliteによる毒性増加要因については,水相中の必須カチオンのバランス変化,特にNaイオンの増加との関係が推測された。手法改良は,添加量を増やすと同時にChelex等の負の影響を除外するために,毒性試験前に吸着剤を分離し,新しい少量の吸着剤を再添加する方法を適用した。結果,疎水性物質を除去するAmbersorb添加系において,成長阻害率が有意に低減したが,Chelexや新規導入した陰イオン交換樹脂のAmberlite-IRA402添加系においては逆に致死率が著しく増加した。対応策として,吸着剤の絶対量を増やさず底泥を希釈することで,吸着剤の効果が表れやすい状態にする方法が考えられる。これに従い,底泥量を通常の半分にし,同量のAmbersorbを添加したところ,致死率も有意に低減したため,疎水性物質が致死毒性要因の一つであることが分かった。 新規分画手法としては,底生生物が摂食することで曝露される底泥粒子吸着態に注目し,模擬消化管液抽出法を検討した。重金属類については牛血清アルブミン溶液,疎水性物質についてはドデシル硫酸ナトリウム溶液を用い,非毒性底泥に適用した結果,残留する抽出液の影響を除外するため,適切な溶液濃度や抽出後の洗浄操作について更なる手法上の検討が必要であると分かった。 また,カイミジンコ底質毒性試験キットであるOstracodtoxkitについて,品質・精度管理を徹底するため,餌用の藻類を自己培養し,Positive control testとしてCuSO4溶液を用いた試験を毎回実施することにした。さらに,海域底泥を対象とした研究を行うために,ニホンドロソコエビを試験生物とした底質毒性試験を立ち上げ,飼育や試験実施の設備準備を行った。
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