2008 Fiscal Year Annual Research Report
フランツ・シューベルトの声楽作品における「特異な突出的部分」の意味について
Project/Area Number |
08J10179
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀 朋平 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | シューベルト / 特異性 / 声楽曲 / 記号論 / ドイツ・ロマン主義 |
Research Abstract |
報告者は平成20年度、貴下の「研究指導委託」を利用してウィーンに滞在し、当地開催の国際会議への出席や豊富な文化的遺産・自然の吸収、貴重資料の収集を行いつつ研究を進めた。それによって--特にビーダーマイヤー時代の絵画に見られるような--シューベルト時代の主体たちが大切に慈しんだ内面と、シューベルトの音楽に現れる強度に満ちた箇所との関連を、より広い視点から考察するという視点を得ることができた。この経験は、報告者の研究の今後の可能性を広げるものだと確信している。 また昨年度に発表した学術論文(1本)では、報告者のもう一つの研究路線であるドイツ・ロマン主義における「自然」概念とシューベルトの音楽との接点に着目した。それによって、第一に、自然への憧憬を音楽作りの核心として浮かび上がらせるシューベルトの特異な音楽語法を抽出し、第二に、そのような特異な部分と楽曲全体の流れとの関係を丁寧に追ったのが、本論文の成果である。この論点も、「突出的部分の意味」をより広い視野から考察するという点で、今後の研究に深みを与える方向性を持つものと自覚している。 さらに昨年度は、申請時に研究テーマの一つとして掲げた「五音音階」という特異な語法の意味についての考察を深化させた。その研究成果は論文にまとめて学会誌『美学』に投稿した。これについては査読の上、今年度発行の同誌にて掲載が認められている(2009年6月刊行)。
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Research Products
(1 results)