2009 Fiscal Year Annual Research Report
中国周縁部におけるツングース系接触言語の研究―シベ語(満洲語口語)を中心に
Project/Area Number |
08J10217
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
児倉 徳和 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | シベ語 / ツングース諸語 / テンス・アスペクト / 話し手と聞き手 |
Research Abstract |
本年度は、主にテンス・アスペクトに関わる補助動詞のうち、ila-(立つ・止まる)、bi-(ある)、o-(なる)の機能について研究を行い、成果を公表した。 まずila-について、他の動詞・形容詞に後続して補助動詞として用いられる場合の機能を検討し、結論として、ila-はアスペクトとして「進行」を表すが、動詞語幹に屈折的に付加される進行アスペクト接辞-maXeiと異なり、「話し手が直接目撃した事態」を表すと論じた。 次にbi-について、従来間接経験を表すとされてきたbi-が、談話においてどのように用いられるかを論じた。そして結論としてbi-は「話し手の視点」を導入する機能を持ち、その使用が、聞き手への配慮による、話し手自身の客観的把握に動機づけられていると主張した。 最後にo-について、従来のアスペクトの観点からの分析に対して、ila-とbi-の研究の成果を受けて、ムードの観点も取り入れて論じた。そして結論として、o-は「話し手の判断」を表し、その使用がbi-と同様、聞き手を通した自己の客観的把握に動機づけられていると主張した。 本年度研究成果から分かったことは、シベ語の補助動詞の使用は、発話現場における話し手・聞き手の関わりを動機としているということである。更に昨年度の研究成果から、定動詞・形動詞・動名詞という述語形式の機能も、話し手と聞き手で共有された知識を表すか否かにより使い分けられることが分かっているが、本年度の補助動詞に関する一連の研究成果から、シベ語は、話し手と聞き手の関わりが、(補助動詞を含めた)述語全体の形式的選択に体系的に関わっていることが示され、シベ語の文法を体系的に記述するという当初の目標を達成することに成功したと考える。
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Research Products
(3 results)