2009 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ合衆国における市民教育としての科学教育の歴史
Project/Area Number |
08J10224
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齊藤 萌木 The University of Tokyo, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 科学的リテラシー / 学習科学 / 科学史 |
Research Abstract |
本年度も引き続き、アメリカ合衆国における市民教育としての科学教育の歴史に関する資料収集・検討、論文執筆を行った。実施した研究は主に以下の2つにまとめられる。 (1)合衆国における市民教育としての科学教育に関するプロジェクトの調査と,その成果に基づく授業実践の分析 4月に渡米し、アメリカにおいて近年盛んになっている、科学的概念の形成や科学的な見方・考え方の育成を目指す科学教育の実現を目指した大規模なプロジェクトについて調査した。活動の概要と基礎的な枠組みは、Yael Kali, Marcia C.Linn, and Jo Ellen Roseman, ed.(2008) Designing Coherent Science Education.や、日本でも三宅なほみ・白水始(2003)『学習科学とテクノロジ』で検討されているが、科学教育史上の位置づけを明らかにした研究は少ない。そこで、これらのプロジェクトを市民教育としての科学教育史の観点から評価するためにプロジェクトの基礎にある学習科学の枠組みに基づき、日本の学校現場において科学的概念の形成に関して十分な成果を上げている、「仮説実験授業」の実践データを題材に分析を行い、枠組みの妥当性を検証した。途中経過は「科学的概念の形成過程における討論の役割の変容比して日本理科教育学会で発表した。 (2)理科教育制度化以前の民衆の自然認識の構造を明らかにするための史料研究 (1)の研究と並行して、理科教育制度化以前の民衆の自然認識の様相、いわば自然についてのリテラシー(常識)の構造を明らかにする研究を進めた。前年度に開始した日本最初の自然学入門書である児島正長著『乗燭或問珍』の活字化、参考文献整理、著者の経歴と執筆の背景事情の解明を完了し、教育学会で発表した。さらに科学史と科学教育の専門家である板倉聖宣との共同研究によって、江戸から明治前期までの自然学、自然科学に関する諸資料の整理と分析を進めた。その過程で、明治初期の科学とその教育に対する社会的関心の高法り(究理熱)の実態を明らかにするとともに、明治半ば以降「迷信」や占いを中心とする神秘的な思想への「逆戻り」が起きた経緯を統計的に解明しようとした論文、「『<文明開化>と占い書の復活』を執筆し、月刊『たのしい授業』に発表した。この論文執筆中には、日本で最初の「無神論=唯物論」の啓蒙書と言える富山淳道著『無鬼新説』を発見することができた。これは科学教育上非常に大きな成果であった。
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Research Products
(3 results)