2008 Fiscal Year Annual Research Report
幼稚園3歳児クラスにおける幼児の性自認メカニズムと「男女間の非対称性」の関係
Project/Area Number |
08J10231
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大滝 世津子 The University of Tokyo, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 幼児 / 性自認 / ジェンダー / ジェンダー・アイデンティティ / 性別カテゴリー / 社会化 / 相互行為 / フィールドワーク |
Research Abstract |
本研究は幼稚園3歳児クラスにおける性自認メカニズムと「男女間の非対称性(男女間の上下関係)形成過程」の関係を明らかにすることを目的とし、神奈川県のQ幼稚園で3歳児クラスに属する幼児、担任保育者を対象として、各幼児の性自認時期の測定を試み、相互行為場面をとらえるための観察を行った。 その結果以下のことが明らかになった。まず3歳児クラスに保育者が「男女間の上下関係を含まない差異」を持ち込み、全ての幼児に対して一貫して提示した。こうした保育者との相互行為を通して、入園時から性自認していた幼児(第1期)の他に「性別カテゴリーとの同一化」あるいは「性別記号との同一化」によって性自認した幼児が現れた(第2期)。これらの幼児が性自認した後も保育者による「男女間の上下関係を含まない差異」の提示は続けられ、次第に性自認した幼児が増加していった。そして男女いずれかの同性集団がクラス内に形成されると、第1期に性自認していた幼児がそれ以降に性自認した幼児の助けを得て、他の幼児たちに「男女間の上下関係を含む差異」を提示しはじめた。このときそれまで「男女間の上下関係を含まない差異」としてしか提示されていなかった性別カテゴリーが「男女間の上下関係を含む差異」へと変質して用いられていた。このような状況において、それまで性自認していなかった幼児たちは仲間からの「男女間の上下関係を含む差異」の提示と保育者からの「男女間の上下関係を含まない差異」の提示という二重の圧力にさらされることになった。これを受けて「同性集団との同一化」あるいは「異性集団との相互補完的同一化」によって一斉に性自認していた。 以上のように、本研究は社会学が今まで問題としてこなかった初期の性自認の時点において既に社会学的関心である権力の問題が介在することを示唆し、性自認と権力とを切り離して理解してきた従来の社会学的前提への問題提起をした。
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Research Products
(1 results)