2008 Fiscal Year Annual Research Report
選択的金属サイトの希薄元素置換による希土類123溶融凝固バルクの高臨界電流特性化
Project/Area Number |
08J10262
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 悠衣 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 銅酸化物高温超伝導体 / 希土類123 / 臨界電流特性 |
Research Abstract |
希土類123(REBa2Cu3O7-d)超伝導バルク材はバルク体を回る永久電流により強磁場を捕捉する性質を持ち、安定・コンパクトな磁場環境を低消費電力で実現可能なことから、捕捉磁場を利用した超伝導モーターや磁気誘導型薬剤搬送システム(MDDS)、次世代NMR用磁石といっか研究開発が精力的に行われている。これらの応用に向けては小型で発生磁界の強いバルク磁石の開発が求められるが、これにはバルク材の臨界電流特性(Jc特性)の改善が不可欠である。高Jc化には磁束のピンニングセンター(磁束ピン)の導入が不可欠であるが、磁束ピン導入に関する研究ではこれまで材料組織制御に主眼がおかれ、化学的見地からの研究は十分にされていなかった。しかしながら、この物質が金属組成に不定比性を持ちうること、また様々な異種金属元素による置換が可能なことから、本研究では固体化学的視点から組成制御にも注目し、任意の金属サイトに異種金属を希薄ドープする方法によって、Jcを劇的に改善する事にこれまで成功してきた。本手法は簡便かつ再現性にも優れ、近年開発が急な超伝導薄膜導体にも適用可能な手法であることから、そのJc改善機構は早急に解明されるべきものである。そこで本研究では、これらの不純物元素がJc特性に与える効果について詳細な機構の解明を目的とした。方針として、希土類123超伝導体の結晶構造がそれぞれ役割の異なる層状構造から構成されていることに注目し、各層における金属組成のわずかな変調がJc特性に与える効果の違いを詳しく調べることで、実用希土類123超伝導材料のJc向上指針の確立、また希土類123超伝導体におけるJc決定因子の解明を目指した。以下に具体的な研究実施項目と成果の概要を示す。 1.超伝導母相の均質性と希薄ドープ効果 これまであまり注視されてこなかった超伝導母相の金属組成について、それらを系統的に変化させた上で不純物元素の希薄ドープを行い、Jcとの関連を調べた。その結果、原子レベルで高い均一性を保つことが高Jc化に対し極めて重要であること、また金属組成を定比に近づけることで、異種金属元素(Sr,Coなど)置換によりJcが向上する効果がさらに増大することを明らかにした。 2.Jcの温度依存性と磁束ピンカの関係 RE123超伝導体において、個々の磁束ピンの強さとJcとの詳細な関連はこれまで明らかではなかった。しかしながら、種類の異なる磁束ピンを含む結晶を用いて、それらのJcの温度依存性を調べ、それを理論的に求めた磁束ピン強さの温度依存性と比較することで、ある臨界半径を境に磁束ピン強さの温度依存性が変化していることが本研究で初めて明らかになった。このことにより、Jcを理論的に概算するための基礎を示すことができた。
|
Research Products
(5 results)