2009 Fiscal Year Annual Research Report
マグネシウム合金の高温変形中の動的組織変化の定式化とそれを利用した高性能化
Project/Area Number |
08J10268
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
徐 世偉 Nagaoka University of Technology, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 汎用マグネシウム合金 / 均質化処理条件 / 鍛造加工 / 再結晶メカニズム / 組織変化 / 動的析出 / 時効処理 / 機械的性質 |
Research Abstract |
通常、鍛造加工には加工性改善のために予め組織制御した押出し材が使用されるが、本研究では汎用マグネシウム合金の連続鋳造材(高アルミニウム含有AZ91合金および1mass%のCaを添加したAZX911合金)をそのまま鍛造加工に使用し、その加工中の再結晶メカニズムと組織変化に及ぼす素材の均質化処理条件、ひずみ速度、加工温度の影響を詳細に調べ、その成果を組織制御へと展開し、マグネシウム合金鍛造材の高強度、高延性化を低コストで達成することを目指した。成果は以下のとおりである。(1)AZ91合金およびAZX911合金の連続鋳造材と均質化処理材の高温圧縮に伴うミクロ組織変化を、後方散乱電子回折法を用いて詳細に検討した。その結果、両合金とも粒内ではまず(10-11)圧縮双晶が生じ、その双晶内に(10-12)引張双晶が生じる二重双晶が形成され、さらに二重双晶内部でのすべり変形と動的回復を伴った転位の再配列により形成される小傾角粒界が大傾角化し、新粒が形成されるという(10-11)-(10-12)二重双晶を伴った動的な連続再結晶(CDRX)が生じる。均質化処理により粒内の溶質濃度を高めた試料では、圧縮加工中に再結晶粒界にMg_<17>Al_<12>(β)相の動的析出も生じ、再結晶粒の粗大化が顕著に抑制される。その成果をもとに高性能化を目指した組織制御を提案し、実証するなど、新たな展開へ向けた研究へと進展させている。(2)圧縮材の再結晶組織に及ぼす圧縮条件の影響を調べ、温度が低く、ひずみ速度が大きいほど再結晶率は低くなり、再結晶粒径は微細になるものの、粒内の溶質濃度が高く、加工温度が低いほど動的に不連続析出するβ相の粒界ピン止めによる再結晶粒粗大化効果が顕著に現れるようになり、その結果、再結晶粒径は従来報告されているような温度補償ひずみ速度(Zener-Hollomonパラメータ)だけでは一義的には表せず、温度に強く依存する。(3)圧縮まま材の引張強さおよび0.2%耐力は低温圧縮中に多量に動的析出するβ相、再結晶粒微細化および強い底面集合組織の形成により改善され、T5処理材では圧縮温度が高くなるほど時効中に微細なβ相が多量に析出するため、引張強さおよび0.2%耐力とも顕著に向上し、鋳造材を用いても加工条件の最適化により既存の展伸用6061アルミニウム合金T6処理材に匹敵する引張特性が得られることを明らかにした。これらの成果は、今年度に第一著者として既に国際学術誌に4本掲載した。さらに、国際会議でも2回日頭発表を行い、「The 1st Japan-China Magnesium Workshop」および「The 3rd Asian symposium on Magnesium Alloys(ASMA-III」では優秀ポスター発表賞を受賞した。
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