2008 Fiscal Year Annual Research Report
冬眠動物の褐色脂肪組織の機能とその制御-冬眠制御器官としての可能性-
Project/Area Number |
08J10270
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
北尾 直也 Asahikawa Medical College, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 冬眠 / 褐色脂肪組織 / アドレナリン受容体 / 熱産生 / 酸素消費 / 脂質代謝 |
Research Abstract |
冬眠動物では、冬眠行動に対応してその熱産生機能は激しく変化する。熱産生器官として知られる褐色脂肪組織(BAT)の機能が冬眠行動において重要であると推定されているが、それを示す直接的な証拠はない。また、深い冬眠中の極端な低体温下ではタンパク質やmRNAの合成がなく、覚醒時の熱産生メカニズムは未明のままである。申請者は冬眠からの覚醒時におけるBAT熱産生の直接的な証拠を得て、低温下での熱産生に関わるメカニズムを明らかにすべく、In vivo,In vitroにおいてアドレナリン受容体の刺激剤、阻害剤を用いて検討を行った。本成果の一部は今夏の国際会議において発表予定である。 熱産生時にはBATへの血流が増加、エネルギー源として主に血液中の脂肪酸が利用されるため、覚醒時の血液の状態を知ることは有用である。冬眠の各段階における血中物質を測定したところ、覚醒時の血漿脂肪酸濃度は覚醒動物の約2倍あり、熱産生基質が十分供給されていることが確かめられた。同時に、血液中の水の減少を示唆する結果が得られ、浸透圧などを介して細胞機能へ影響している可能性が大きいことから、この点についても検討を加えた。その結果、腸管内が体液プールとして機能し、冬眠段階に応じて速やかに水の出納が行われていることを明らかにし、国内会議で報告した。 冬眠メカニズムに関して本研究から得られる成果をヒトに応用する場合、実験動物として用いているハムスターは温熱生理学的観点から小型過ぎる。そこで、より大きく、冬眠可能性が示唆されているエゾタヌキに着目し、その実験用冬眠動物としての適応を検討した。大きな体温低下など冬眠を示唆する結果は得られなかったが、冬眠動物であるジリスなどと同様の越冬前の脂肪蓄積や、越冬時の血漿脂質の変化も明らかとなり、これらの結果は国際雑誌に報告した。
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Research Products
(4 results)