2010 Fiscal Year Annual Research Report
冬眠動物の褐色脂肪組織の機能とその制御-冬眠制御器官としての可能性-
Project/Area Number |
08J10270
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
北尾 直也 旭川医科大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 冬眠 / 褐色脂肪組織 / アドレナリン受容体 / 熱産生 / 酸素消費 / 脂質代謝 |
Research Abstract |
褐色脂肪組織(BAT)は冬眠からの覚醒において不可欠な熱産生器官であると考えられているが、そのメカニズムは不明な点が多い。BAT熱産生には特にアドレナリンβ3受容体を介したものが重要であるが、冬眠からの覚醒に重要な経路は不明である。申請者は、冬眠からの覚醒に重要なアドレナリン受容体サブタイプを特定するとともに、昨年度明らかにした低温下での高い応答性を示すメカニズムについて、BAT熱産生の主要な細胞内刺激伝達物質であるcAMPに着目して検討を行った。 深い冬眠中のゴールデンハムスターに各種アドレナリン受容体作動薬を投与したところ、アドレナリンβ3作動薬では覚醒を誘発することが出来たが、アドレナリンα1作動薬・β1作動薬は覚醒を誘発することはなく、この結果から、冬眠からの覚醒には通常と同様、アドレナリンβ3受容体が最も重要であることが示された。 低温下でのBAT熱産生の機能を評価すべく、温暖順化動物(温暖群)、冬眠中の動物(冬眠群)それぞれからBATを摘出し、12℃に保持したチャンバー内で組織細片の酸素消費量を測定した。アドレナリンβ3作動薬に対する酸素消費速度の上昇は、冬眠群で有意に増大していた。そこで、細胞内のアデニル酸シクラーゼを直接的に活性化させ、細胞内cAMP量の上昇を促すフォルスコリンを投与すると、両者の酸素消費速度の上昇に有意な差はみられず、共にβ3作動薬投与時と同レベルの高い値を示した。また、アドレナリンβ3作動薬に対する、細胞内のcAMP産生量を両者で比較したところ、温暖群において有意に低い値を示した。以上の結果は、低温下において、温暖群のBATは交感神経刺激に応じたcAMP産生能力が低いが、冬眠群のBATは高く維持されていることを強く示唆しており、この結果、冬眠動物のBATにおいてのみ、低温下でアドレナリンβ3作動薬に対して高い熱産生能を示したと考えられる。
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Research Products
(5 results)