2009 Fiscal Year Annual Research Report
冬眠動物の褐色脂肪組織の機能とその制御-冬眠制御器官としての可能性-
Project/Area Number |
08J10270
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
北尾 直也 Asahikawa Medical College, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 冬眠 / 褐色脂肪組織 / アドレナリン受容体 / 熱産生 / 酸素消費 / 脂質体謝 |
Research Abstract |
冬眠動物では、冬眠行動に対応してその熱産生機能は激しく変化する。熱産生器官として知られる褐色脂肪組織(BAT)の機能が冬眠行動において重要であると推定されているが、それを示す直接的な証拠はない。申請者は冬眠からの覚醒時における、低温下でのBAT熱産生に関わるメカニズムを明らかにすべく、In vivo, In vitroにおいてアドレナリン受容体の刺激剤、阻害剤を用いて検討を行った。 人為的に覚醒刺激を加えたゴールデンハムスターにアドレナリン受容体刺激剤を持続投与したところ、生理食塩水を投与した時に比べ、覚醒初期の単位時間当たりのBAT温度上昇に有意な差が認められ、その結果、覚醒までの時間が短縮された。一方、アドレナリン受容体阻害薬を皮下投与すると、いずれの個体においても覚醒までの時間は延長し、うち一部の個体では覚醒が完全に妨げられた。自然な冬眠覚醒におけるBATの役割を明らかにすべく、人為的に刺激を加えない状態で実験を行ったところ、刺激剤の投与でのみ覚醒を誘発することが出来た。 温暖順化動物、5℃で2週間飼育した寒冷順化動物、そして冬眠中の動物からBATを摘出し、異なる温度に保持したチャンバー内で組織細片の酸素消費量を測定した。36℃に保持したチャンバー内で測定を行ったところ、アドレナリン受容体刺激剤に対する酸素消費速度の上昇は、温暖順化動物に比べ、寒冷順化動物でやや小さかったが、冬眠動物ではほぼ同じであった。一方、12℃に保持したチャンバー内で測定を行ったところ、刺激剤に対する上昇は、温暖順化動物と寒冷順化動物はほぼ同じであったのに対し、冬眠群で有意に増大していた。 これらの結果は、冬眠中のBATは氷点近くという非常に低い温度下でも刺激に対して応答し、すみやかに産熱し得る機構を持ち、おそらくそれにより覚醒が惹起されるであろうことが示唆された。
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Research Products
(5 results)