2008 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀アメリカ合衆国におけるピッチクラス・セット理論をめぐる音楽理論史研究
Project/Area Number |
08J10287
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
日比 美和子 Tokyo National University of Fine Arts and Music, 音楽学部, 特別研究員DC1
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Keywords | 音楽理論 / 音楽分析 / アメリカ合衆国 / ピッチクラス・セット理論 / 無調音楽 / アレン・フォート |
Research Abstract |
今年度の研究結果は次の3点に集約できる。1)理論が持つ文化的政治性や理論の確立者自身の思想的背景を考察するための資料収集と検討。ピッチクラス・セット理論を展開させたA.フォートの思想的背景を明らかにするため、ノーステキサス大学音楽学部アレン・フォート・アーカイブで公開されている、フォートが様々な作曲家の作品分析を行った際に書き込みを加えた楽譜などを検討した。ニューヨークでの調査旅行ではJ.ストラウスを始めピッチクラス・セット理論の展開における主導的な音楽学者たちにインタビューを行った。このインタビューは平成21年度も継続し、ピッチクラス・セット理論の創造と教育機関における理論の組織的な展開についての考察に用いる。2)ピッチクラス・セット理論を中心とした1950年代以降の楽曲分析の妥当性の検証。多種多様な楽曲分析の妥当性を比較検討するために、多くの理論家や音楽学者たちによって楽曲分析が行われているA.シェーンベルク作曲《ピアノ小品Op.11/No.1》を取り上げ、分析論文の比較を行った。そして理論家たちが各々の理論概念を提示するため、あるいは音楽を語る上での語法の独自性を提示するために分析を行っていることを指摘した。3)多様な理論の整理。広義に「シェンカー風理論」と括られる多様な理論を3種の傾向、すなわちシェンカー理論を直接の起源とする"prolongational"な方法論、フォートらのピッチクラス・セット理論を基盤とする"aasociational"な方法論、D.ルーウィンの理論に代表される"transformational"な方法論に分類し各々の方法論の特徴と方法論間の影響関係を明らかにすることに成功した。研究の成果は10月の日本音楽学会全国大会にて「無調音楽の分析における"voice leading"手法の比較」として口頭発表を行った。
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Research Products
(2 results)