2010 Fiscal Year Annual Research Report
線虫バイオセンサーによる、毒物検出法と解毒物質スクリーニング法の開発
Project/Area Number |
08J10336
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
長谷川 浩一 中部大学, 応用生物学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | Caenorhabditis elegans / GST / アクリルアミド / アルジカルブ / ストレス / XREP |
Research Abstract |
食品や環境中に含まれる有害物質が体内に取り込まれると、直接もしくは間接的にDNAや細胞、組織などに損傷を与えてしまう。こうした損傷が体内に蓄積し、老化や様々な病気の原因となる。有害物質から生体を防衛する役割を担う酵素のひとつが、GST (Glutathione S-Transferase)である。当該年度は、ある一定濃度の食品危害物質アクリルアミドを一定時間だけ線虫に処理した場合、悪影響なくGSTの発現を誘導させる効果があることを調べた。このようなアクリルアミド処理をした線虫は、農薬アルジカルブに対する耐性が付与され、さらにこの反応は、当研究室にて遺伝学的に発見したXREP-1/XREP-3経路を介した反応であることもわかった。摂取する量および時間をコントロールすれば、食品危害物質アクリルアミドも有益物質として利用できるかもしれない。すなわち、毒と薬は紙一重であり、摂取量を変えるだけで毒にも薬にもなるのである。 またY2H法の実験結果から、GSTの発現を負に制御するXREP-1と、正に制御するXREP-3との間に結合性があることもわかった。さらにどちらかに変異が生じたばあい、両者が結合できなくなることもわかった。すなわち、ふだんXREP-1はXREP-3と結合することで、XREP-3を抑制しているが、毒物が体内に取り込まれると、XREP-1との結合がはずれて自由になったXREP-3がGST発現を誘導するというシナリオが描けた。こういったXREP-1/XREP-3の振る舞いは、哺乳類で知られているKeap1/Nrf2と非常によく似ており、線虫によって展開されつつある当該分野の成果は、今後ヒトへの応用が期待される。
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