2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J10429
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高野 奈未 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 近世文学 / 国学 / 古典注釈 / 和歌 / 賀茂真淵 |
Research Abstract |
今年度は、特に宝暦期とそれ以前の真淵の動向およびその古典注釈についての調査・分析を行い、基礎研究の拡充を目指した。うち、真淵の百人一首注釈の成立と源氏物語注釈の方法について、以下の2つの論文によって示した。1,論文「賀茂真淵の初期活動-百人一首注釈をめぐって-」では、『百人一首古説』と、その欠点を補うため晩年に改稿して出された『うひまなび』の二つの百人一首注釈を比較することによって、真淵の初期活動の実態とそれに対する晩年の意識を明確にした。『百人一首古説』には歌や歌人に対する評価について晩年の上代志向および漢学排除の姿勢と食い違う態度が確認できる。また、譬喩と序の関係や発語への関心が見られること、荷田家の共同研究の場で形成された説が真淵の注釈に反映していること、先行注釈の検討の方法は晩年のそれと共通していることを指摘した。2,論文「賀茂真淵と源氏物語-『源氏物語新釈』の注釈方法をめぐって-」では、真淵が源氏物語を批判した理由とその背景について明確にした。すなわち、真淵は源氏物語と古代文学との共通性については積極的に評価して強調しており、源氏物語批判は真淵の歌学上の主張に反する部分についてなされたものである。またその方法が源氏物語の表現の重層性を結果的に読み解くものとなっていることを指摘した。 以上により、真淵の古典注釈についての活動の実態・変遷を具体的に示し、注釈方法およびその内容の特徴について明らかにした。この成果を踏まえ、真淵の伊勢物語注釈について、近世の古典注釈史上の位置、注釈方法の特徴、近世文学に対する影響を明らかにする論文を現在執筆中である。
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Research Products
(3 results)