2009 Fiscal Year Annual Research Report
海洋大循環モデルの高精度化に向けた境界混合過程のパラメータ化
Project/Area Number |
08J10435
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 祐希 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | クリル海峡 / 鉛直乱流拡散係数 / 潮汐混合 / 沿岸捕捉波 |
Research Abstract |
オホーツク海と北太平洋とを隔てるクリル海峡では、強い潮汐流と海底地形との相互作用により励起された大振幅内部波が砕波することで、活発な鉛直乱流混合が誘起されている。この鉛直乱流混合は、北太平洋中層水の形成を強く規定していると考えられてきた。しかしながら、クリル海峡における鉛直乱流拡散係数の見積もりは、衛星海面高度データを用いた間接的なものしか存在しなかった。 本研究では、まず、内部波の励起・伝播・散逸を直接的に再現できる3次元モデルを用いた数値実験を行い、衛星海面高度データを用いた見積もり結果を検証するとともに、強い鉛直混合を引き起こす物理機構について詳細な考察を行った。計算の結果、クリル海峡内で卓越する日周潮汐によって励起される内部波エネルギーの量は先行研究の結果と整合的であったが、日周潮周波数がこの海域での慣性周波数以下であるために、励起された内部波の大部分は島の周りに捕捉されながら海峡内で散逸してしまう、ということが明らかになった。さらに、この沿岸捕捉波に伴う流速シアーによって、海底近傍に限定された強混合域が形成されるものの、クリル-海峡全域での平均的な鉛直拡散係数は、従来の海洋大循環モデルで仮定されてきた値より1オーダーも小さなものであると見積もられた。 次に、得られた鉛直拡散係数を渦許容海洋大循環モデルへ組み込み、その北太平洋中層水形成への役割の再評価を行った。計算の結果、従来の低解像度モデルではクリル海峡全域で非現実的に大きな鉛直拡散係数を仮定しない限り再現できなかった北太平洋中層水が、渦許容海洋大循環モデルでは本研究で得られた鉛直拡散係数で十分正確に再現できることが示された。これは、北太平洋中層水形成に対するクリル海峡内の潮汐混合の効果が実際にはわずかで、渦許容モデルによって再現可能となる中規模渦などによる効果の方がはるかに重要であることを示すものである。
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Research Products
(3 results)