2010 Fiscal Year Annual Research Report
マルチフェロイクスにおける磁気対称性と誘電性の相関
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08J10458
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
関 真一郎 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | マルチフェロイクス / フラストレーション磁性体 / 電気磁気効果 |
Research Abstract |
最終年にあたる本年度は、前年度までに開拓した三角格子系マルチフェロイクスを利用して、その動的な応答を明らかにするとともに、より新規な物質機能を引き出すことを目的として研究を行った。 (1)磁性と誘電性が強く相関した系においては、しばしば振動磁場ではなく振動電場によって磁気励起を駆動できることがあり、こうしたモードはエレクトロマグノンと呼ばれ、マルチフェロイクスに特徴的な素励起として注目されている。本研究では、三角格子反強磁性体CuFe_<1-x>Ga_xO_2を対象とし、その低エネルギーダイナミクスをTHz時間領域分光法を用いて測定した結果、常誘電・共線磁気相においてもエレクトロマグノンが観測されることを発見した。従来のElectromagnonの観測は、すべて強誘電らせん磁性体に限られており、その動的な電気磁気結合は交換歪機構によるとされてきた。しかし、このモデルはCollinearな磁性体にたいしてElectromagnonの発現を予測することができず、本研究で観測されたモードはスピン軌道相互作用に由来する初めてのElectromagnonであると考えられる。また、今回の結果はElectromagnonの発現に強誘電性・らせん磁性はともに必要ないことを示しており、より幅広い物質で同様のモードを観測できることが期待される。 (2)前年度に発見した三角格子を伴うマルチフェロイック物質MnI_2を対象とし、回転磁場下での誘電応答について詳細に調べた。この物質では、3.5K以下でProper Screw磁気相への転移と同時に面内方向に強誘電分極が生じる。また、三角格子の対称性を反映して6とおりのマルチフェロイックドメインが存在することもわかっており、面内磁場によるドメイン分布の制御を通じて、磁場を60度回転するごとに分極方向を不連続に120度回転させられることがわかった。さらに、3T以上の磁場の下では異なる磁気変調ベクトルを伴う別のらせん磁気相に転移し、観測される分極の回転パターンが大きく変化することもわかった。特に、2つのらせん磁気相の相境界付近では、磁場を時計回りに一回転するごとに電気分極が反時計回りになめらかに2回転するような特異な電気磁気効果を観測することができた。こうした振る舞いは、2つの磁気相の競合によって磁気変調ベクトルの自由度が増し、その向きを回転磁場によって制御することによって生じていると理解される。
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Research Products
(5 results)