2008 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化時代における「現代芸術」実践:芸術人類学の再検討
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08J10461
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東山 朋子 (丹羽 朋子) The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 文化人類学 / 中国・民間芸術 / 中国・陝北地域 / アート・プロジェクト / 剪紙 / 窰洞 |
Research Abstract |
本年度は主として、中国・陜西省の農村部を拠点としたフィールドワーク及び文献調査を計二期、約半年にわたって実施した。同時に映像を用いた人類学的調査法を中心に方法論や理論的枠組を検討し、これを活かして現在、調査対象者との協働で民族誌的映像作品を制作中である。本成果は次年度に国内外の学会やアウトリーチ活動において発表を予定している。 調査事例である中国・陜北地域の「剪紙」(切り紙)をめぐるアート・プロジェクトは、これまで主に企画・展示主体である現代美術家側の言説に添う形で、「現代芸術」の一実践として扱われてきた。 これに対して報告者は、プロジェクトの実施地に住む多様な参与者・非参与者を対象に調査を行う中で、「剪紙」というモノや行為そのものに着目し、それが当地の生活において有する意味や「芸術」化のプロセス等を明らかにしつつある。これは、芸術(と呼ばれうる)実践が埋め込まれている文化・社会的文脈、芸術家以外の参与者の行為や思考等を焦点化し、より広い視角から「現代芸術」やモノづくりを考察する試みとして位置づけられる。 調査は具体的に以下のような領域に及ぶ。 (A)「剪紙」等「民間芸術」が生み出される土壌としての陜北地域の農村社会 特に横穴式伝統住居「窰洞」をめぐる生活や習俗、そこに通底する人々の思考や規範、ハビトゥス等 (B)1970年代に始まる当該地域における「民間芸術」の振興活動 農民作家と地域内外の職業芸術家との相補関係、民間芸術の政治的流用等の歴史背景 (C)上記を土台に住民と芸術家が協働で取り組んでいる美術教育や博物館設立のプロジェクト 本調査を通して本年度は、漢字文化圏における非識字者の口頭的・視覚造形的思考、作品制作における「人・もの・環境」のインタラクションの分析等に関して一定の研究結果を得た。これらは文化人類学のみならず中国美術史や芸術研究に関して重要な論点を提示するものとして、論文執筆予定である。
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