2010 Fiscal Year Annual Research Report
Calpastatin遺伝子改変マウスによるCdk5異常活性化と神経細胞死の解析
Project/Area Number |
08J10574
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
佐藤 亘 首都大学東京, 大学院・理工学研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | Cdk5 / カルパイン / カルパスタチン / アルツハイマー病 / カルシウム / 神経生化学 / タンパク質分解 / 神経細胞死 |
Research Abstract |
本研究計画の最終年度にあたる本年度の研究では、これまでの遺伝子改変マウスを用いた系のほか、マウス脳部位におけるカルパスタチン量の違いに着目し、カルパインによるp35の限定分解の解析を行った。マウス脳のライセートを脳部位別に作製してウェスタンブロットによりカルパスタチン量を比較したところ、小脳では大脳に比べて約5倍多いことが明らかとなった。この結果から、小脳と大脳を野生型マウスにおけるカルパスタチン量の相違とp35限定分解の違いを示すモデルとして考え、大脳と小脳の脳抽出液を作製しカルシウム存在下でインキュベートしたところ、小脳では大脳に比べてカルパインにより生成されるp25の量が少ないことが明らかとなった。この結果は、マウス大脳および小脳の初代培養神経細胞をカルシウムイオノフォアあるいはAβペプチド処理した際にも同様であった。さらに、虚血モデルおよび死後脳を用いて個体レベルにおけるp35限定分解の解析を行ったところ、小脳では大脳に比べて生成されるp25の量が少ないことが明らかとなった。以上の結果から、脳内ではカルパインによるp35の限定分解がカルパスタチンによって制御されている可能性が強く示唆された。 本研究計画におけるカルパスタチン遺伝子改変マウスおよび脳部位によるカルパスタチン量の相違を示すモデルから、カルパインによるp35の限定分解はカルパスタチンによって制御されている可能性が示された。p35の限定分解によるp25の生成はCdk5の異常活性化を引き起こし、その結果としてアルツハイマー病などの発症に関与すると考えられている。我々の研究において実際にアルツハイマー病患者の脳におけるカルパスタチン量を調べてみたところ、他の疾患の患者に比べてアルツハイマー病患者ではカルパスタチン量が顕著に減少していることが示されている。以上の結果から、カルパスタチンなどのカルパイン阻害剤やCdk5阻害剤は、アルツハイマー病の発症および病態進行の防止に対して有効な治療方法としての創薬候補となりうる可能性が十分に考えられる。
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Research Products
(3 results)