2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J10579
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
笛田 千容 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | エルサルバドル / コスタリカ / ニカラグア / 企業社会 / 経路依存性 / 多重行動領域 |
Research Abstract |
1.中米三ヵ国(コスタリカ、ニカラグア、エルサルバドル)の教育研究機関(中米経営大学院INCAE)および各国経済団体を訪問し、資料・文献収集ならびに関係者・有識者からの聞き取り調査を行った。 2.分析枠組みの再検討を行った。従来の経路依存性アプローチは、制度や構造の持続を説明するには適しているが、「持続の中の変化」の動態をうまく描出することが出来ない。そこで、「多重行動領域」(Crouch and Keune)の考えをヒントに、反応連鎖を国民国家と地域(複数国)のレベルに分けて分析することにした。そうすることで、従来型の静的な反応連鎖と同時に、しかしそれとは別に、よりダイナミックなタイプの反応連鎖を導入することが可能になる。本研究において後者のタイプの反応連鎖は、地域における経営学と政策研究の普及、そしてそれに伴う新しいタイプの経済エリートの登場である。 3.経路依存性アプローチの局面ごとに異なる変数を特定し、新自由主義改革とその政治的インパクトを説明するための三ヵ国比較の図式を完成させた。構造的粘着(初期の経済グループと自由主義の伝統)については「経済エリートの同盟形態」、従来型の静的な反応連鎖(頂上団体の形成と危機感の共有)については「企業社会全体の団結力」、本研究が新たに導入する動的な反応連鎖(経営者イデオロギーと地域統合)については「経営者イデオロギー」という変数を導出する。 3つの変数を使った分析は二段階ある。まず、「経済エリートの同盟形態」と「経営者イデオロギー」を使って、「階級権力の重点移動」という第四の変数を導出する。次に、「企業社会全体の団結力」と「階級権力の重点移動」(第四の変数)を使って、各国における政治的対立の穏健化や二極化、四極化を説明する。 4.以上の成果を踏まえた論文の発表に向けて現在、鋭意執筆中である。
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