2008 Fiscal Year Annual Research Report
充填スクッテルダイト化合物の純良資料作成と特異結晶構造が可能にする新奇物性の解明
Project/Area Number |
08J10585
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
田中 謙弥 Tokyo Metropolitan University, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | スクッテルダイト / 重い電子 / 超伝導 / 高圧合成 |
Research Abstract |
充填スクッテルダイト化合物PrOs4Sb12は、比熱や中性子散乱などの実験結果から、Prの4f電子が持つ四極子の自由度が関わっている新しいタイプの超伝導体であると考えられている。しかし、超伝導の転移温度や、転移に伴う比熱のとびの大きさなどに試料依存性が大きく、その原因のひとつとして、従来の常圧下の試料作成法で作られた場合、かごの大きいSb系のスクッテルダイトに共通する問題である、希土類サイトの欠損が考えられた。そこで本研究では、希土類サイトの充填率の問題を解決し、電気抵抗、磁化、比熱などの基本物性から、超伝導の本質的な特性を明らかにすることを目的とした。我々は、これまで高圧合成法を用いて充填率がほぼ100%であるPrFe4Sb12の作成に成功していた。PrOs4Sb12においては、従来の高圧合成法にフラックス法の要素を取り入れた新しい試料作成法を確立し、充填率の高い純良単結晶の育成に挑戦した。フラックス量や育成温度の最適な条件などを絞り込んだ結果、最大1mm程度の大きさの単結晶を育成することに初めて成功した。育成された単結晶における電気抵抗、磁化、比熱の測定から、高圧下で育成したPrOs4Sb12では、常圧下で作成した試料と比較して、結晶場の基底状態・1と第一励起状態のエネルギーギャップが増大することに伴い、超伝導の転移温度および比熱のとびが減少することを確認した。この結晶場のエネルギーギャップと超伝導特性の関係は、Prの4f電子がもつ四極子の自由度が重要な役割を果たしていることを示唆する結果であり、この物質に新しいメカニズムの超伝導が発現していることの強い証拠であると考えられる。
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Research Products
(3 results)