2009 Fiscal Year Annual Research Report
「悩み」の社会化-エチオピアの聖地参詣の動機をめぐる民族誌映画の制作を通して
Project/Area Number |
08J10660
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
松波 康男 Hitotsubashi University, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | エチオピア / 参詣 / 精霊憑依 / 聖者崇拝 / 悩み / 民族誌映画 |
Research Abstract |
平成21年秋期から翌年春期にエチオピア国東ショア地方のボリ村、アルシ地方のファラカサを主な拠点として参与観察調査を実施した。ボリ村で開催される宗教集会に参加し、主催者の許可を得て、その様子を録音、撮影するなど一次資料の採集に努め、その後に複数の現地アシスタントの協力を得て、宗教集会での対話の書き起こし、翻訳までを実施した。さらにはポボリ村周辺における世帯調査を実施することで、周辺住民の社会生活を分析する基礎資料を構築することができた。ボリ村周辺では宗教集会の参加者のほとんどがクリスチャンであるにも関わらず、この宗教集会で唱和される宗教歌には当地のイスラーム信仰に関連深い人名、用語が頻出する。このことをうまく理解するのに世帯調査で聞かれた人々の語りが助けとなった。ウォッロ地方では、19世紀の後半に皇帝ヨハンネス4世の政策により、人々が、昼はクリスチャン、夜はイスラームといった二重生活を送ることを選択したことはよく知られているが、ボリ村周辺でもこれとよく似た内容の語りが聞かれた。すなわち、ウォッロ同様に、ボリ村周辺のムスリムは「口のみ」、「昼のみ」の改宗をし、秘密裏にイスラームの慣習を行いながらこの土地に留まったのだという。このことは現在、キリスト教徒を自称するボリ住民が行う宗教集会でイスラーム的特徴が随所にみられることに影響しているだろう。 さらには平成22年1月から2月にかけて、世帯調査で浮上した近辺の知られた参詣地を訪問し、撮影及び調査を行った。その結果、参詣地には精霊、儀礼、宗教等の諸々のレベルで、個別の特徴があることが分かり、この個別の特徴の差分が人々に複数の参詣を慣行させる理由を提供していることが明らかとなった。
|