2008 Fiscal Year Annual Research Report
映画の自由:ドイツにおける映画法・映画助成法を素材として
Project/Area Number |
08J10674
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 和文 The University of Tokyo, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 映画 / 検閲 / 表現の自由 / 言論の自由 / マスメディア |
Research Abstract |
平成20年度は、当初の研究計画に従い、ヴァイマール期のドイツにおける映画検閲に関する研究を遂行した。資料としては、ヴァイマール憲法の注釈書・ハンドブック類、映画法制に関する解説書、およびライヒ議会の議事録等を閲読し、映画検閲を正当化するために提示された諸々の論拠およびその変遷を調査・検討した。 主たる成果を圧縮して述べれば、次の通りである:まず学説上、映画は必ずしも常に、印刷物と同じ意見表明の手段として扱われたわけではなかった。映画検閲を正当化する実質的な論拠としては、低俗作品からの社会倫理の保護、映画の強力な感化力による政治的・道徳的影響からの治安および国民道徳の保護、事前に統一的な検閲を行うことによる製作者側の経済的リスクの回避、等の要請が提示されていた。またライヒ議会での審議を通観すると、当初は、商業主義に基づく低俗な作品の氾濫に抗して、映画を国民教育・国民文化の観点から質の高いメディアへと改善していくべきことが提唱されていた。しかし、20年代後半から30年代にかけて、映画が政党による政治的宣伝の手段とされるようになると、映画を用いた宣伝がもたらす危険性が指摘され、そこから公共の安全をいかに保護するのか、が主たる関心事となるに至った。 本課題に関する研究はいまだ完遂されていないが、映画検閲をめぐる研究は国内においては管見の限り稀少であり、また本課題の研究を通して、放送をはじめとする強大な影響力を有するメディアに関する法制度のありようを検討・構想する上で有益な示唆を得ることができるものと考えられる。
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Research Products
(2 results)