2008 Fiscal Year Annual Research Report
[70]フラーレンの特異的化学修飾とそれを利用した分子デバイスの創成
Project/Area Number |
08J10690
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 健志 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フラーレン / 化学修飾 / 鉄 / ルテニウム / X線結晶構造解析 / 化学的還元 / 電気化学 / 光電変換特性 |
Research Abstract |
[70]フラーレンのデバイスへの応用を考えるにあたって,フラーレン骨格に対する適切な化学修飾が必要である.しかし[70]フラーレンはその中央部分に反応性の低いベルト構造と呼ばれる部分を持つため,今までのところ自由な化学修飾は妨げられている.そこで,私は[70]フラーレンの六重付加型二核金属錯体に対して化学的還元による化学修飾法を用いて[70]フラーレンのベルト構造に対する官能基化を試みた,[70]フラーレン六重付加体は金属カリウムによって2電子還元され,これに臭化ベンジルを加えることによって官能基がさらに2個導入された八重付加型二核金属錯体が生成した.構造決定は,X線結晶構造解析によって行った.これによると,確かにベルト構造が化学修飾された八重付加体が生成していることがわかった.位置異性体として3種類の化合物の生成が考えられるが,そのうちの1つの異性体のみが位置選択的に得られた.密度汎関数法を用いた量子化学計算によって反応中間体のスピン密度を計算したところ,反応機構を説明することができ,選択性の発現する理由を明らかにした.したがってこの研究によって,反応不活性な部位を持ち自由な化学修飾が困難だった[70]フラーレンの新しい化学修飾法を確立することとなった.カルボン酸部位を持った八重付加体の自己組織化単分子膜を作成し,その光電変換特性が2つの金属の効果によってどういう影響を受けるかを調べた.測定の結果,鉄二核錯体を用いたところカソード電流のみが流れ,ルテニウム二核錯体を用いたところアノード電流のみが流れた.メカニズムを考察すると,金属の電子状態の違いによって電流の方向をスイッチングできることがわかった.今後は八重付加体の電子構造を調整することによって,有機太陽電池の実用化に関して要請されている効率の上昇を目指したい.
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Research Products
(2 results)