2008 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエmiRNA経路における翻訳抑制機構の生化学的解析
Project/Area Number |
08J10706
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩崎 信太郎 The University of Tokyo, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Argonaute / RNA silencing / 翻訳抑制 |
Research Abstract |
近年、21-24塩基長のsmall RNAによる標的遺伝子制御機構が広く注目されている。代表的なsmall RNAであるmiRNAは、その配列と部分相補的な配列を複数個もつmRNAの翻訳を抑制し標的遺伝子の発現を制御する。miRNAは最終的にArgonauteタンパク質(Ago)に取り込まれ機能することが知られている。miRNAによって疾患を含めた非常に重要な生物学的機能が制御されていることから、miRNAによる翻訳抑制のメカニズムの解明は早期に望まれる。しかしながら、これまでの報告は実験条件により全く異なった結果を示しており、明確な結論は得られていない。これらの報告では生物種によって数個存在するAgoタンパク質の種類による違いに関してほとんど解析されてこなかったことから、我々は「Agoごとに翻訳抑制の作用機序が異なることによって矛盾した結果が生じているのではないか」という仮説を立てた。 ショウジョウバエにはAgoが2種類存在する(Ago1およびAgo2)が、本研究においてショウジョウバエ胚抽出液を用いることによって、Ago1とAgo2による効果を厳密にコントロールし、翻訳抑制を再現することができるin vitro系を構築することに成功した。その結果、Ago1とAgo2の両方が翻訳抑制を引き起こすことができ、その翻訳抑制の様式に明確な違いがあることが分かった。Ago1は「cap構造の認識段階以後」を阻害するのに加え、同時に標的mRNAのpoly(A)鎖の短縮を促進することで翻訳の開始の効率を低下させる。また両方の経路にAgo1結合タンパク質であるGW182が必要である。これに対してAgo2は翻訳開始因子eIF4Eに結合し、翻訳開始因子eIF4GとeIF4Eとの結合を阻害することで「cap構造の認識段階」を阻害する。 この結果はこれまでの矛盾する報告を説明できるだけでなく、Agoによる翻訳抑制の様式を明確にしたもである。今後はヒトに存在する4つのAgoによる翻訳抑制の様式にも大きな違いがあるのかどうか検証してゆきたい。
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Research Products
(4 results)