2010 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエmiRNA経路における翻訳抑制機構の生化学的解析
Project/Area Number |
08J10706
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩崎 信太郎 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員DC1
|
Keywords | Argonaute / RNA silencing / 翻訳抑制 |
Research Abstract |
近年、21-24塩基長の小分子RNAによる標的遺伝子のサイレンシング機構が広く注目されている。small RNAの中で最もよく知られているものとしてsmall interfering RNA (siRNA)とmicroRNA (miRNA)がある。siRNAおよびmiRNAは最終的にエフェクター複合体であるRNA-induced silencing complex (RISC)へと取り込まれ、機能する。このRISCの核をなすのがArgonaute(Ago)サブファミリーに属するタンパク質である。 Ago2-RISCの形成過程ではまず初めにsiRNA二本鎖がAgo2へと受け渡される。これを「siRNA二本鎖の積み込み」と呼ぶ。その後、siRNA二本鎖のうち一方のRNA鎖が残りもう一方のRNA鎖が分解された後、成熟したAgo2-RISCとなる。この過程を「siRNA二本鎖の巻き戻し」と呼ぶ。これまでの知見によりAgo2への「siRNA二本鎖の積み込み」にはATPが必要であることが分かっていた。しかしながら,一体ATPがどんな因子によって消費されているのかといったことは明らかとなっていなかった。 そこで、ATPを消費しAgo2への「siRNA二本鎖の積み込み」を担う因子を同定することを目的として研究を行った。結果として、Ago2結合因子としてHsc70/Hsp90シャペロンマシナリーを同定し、Hsc70/Hsp90シャペロンマシナリーがショウジョウバエおよびヒトの「小分子RNA二本鎖の積み込み」反応に必要であることを発見した。Hsc70/Hsp90シャペロンマシナリーはATPを消費しつつ結合したタンパク質の構造を変化させ、そのタンパク質の成熟化を促すことがよく知られている。この結果により「小分子RNA二本鎖の積み込み」とは、Hsc70/Hsp90シャペロンマシナリーがATPを消費しつつAgoの構造を、小分子RNA二本鎖を取り込めない構造から取り込める構造へと変化させる反応である、というモデルを考えることができる。 この研究では、Agoへの「小分子RNA二本鎖の積み込み」にHsc70/Hsp90シャペロンマシナリーが「必要」であるということを示した。しかしながら、その逆に一体どんな因子によって「十分に」Agoへの「小分子RNA二本鎖の積み込み」、が起こるのか、といったことは解明されておらず,今後のさらなる研究が望まれる。
|
Research Products
(5 results)