Research Abstract |
本年度は,進化のモデルの解析をさらに進め,また類似のモデルであるpartial annealingについての研究を行った.まず進化のモデルについて,冗長性と安定な進化の関係について数値的な実験を行い,「変異について安定な相互作用が進化するためには,最適な冗長度が存在する」という結果をまとめた.冗長性と進化についての関係は活発に議論されてきたが,本研究は既存の研究と比較して,より定量的な議論を行っている.統計力学,および情報理論の手法を用いて,冗長性と進化についての関係をさらに明確にしていくことが,今後の課題である. このような数値的な結果を踏まえ,進化のモデルの時間発展則と似た性質を持つpartial annealingを,冗長性を持つTakayama-modelと呼ぶ系に対して行った.その結果,進化のモデルで得られたlocal Mattis stateとは異なる相互作用が得られた.その理由は,partial annealingでは,相互作用の時間発展を自由エネルギーが支配しているため,系に冗長性を入れてもグローバルな構造が出てしまう,と解釈できる.またこの模型は,「あるレプリカ数以上では,リエントラント転移が起こらない」というレプリカ数に関する転移を示すことが分かり,レプリカ対称性の破れとは関係なく,転移が起こりうるという例を示した. また進化のモデルとpartial annealingを比較し,進化のモデルの結果は「適応度とエネルギーに相関があること」,「あるパラメータを用いて,適応度地形を変形できること」という二つの条件に強く依存するということがわかった.
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