2008 Fiscal Year Annual Research Report
絶滅腕足類の殻形態:その流体力学的効果による受動的採餌流の形成機構と採餌効率
Project/Area Number |
08J10796
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
椎野 勇太 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | バイオメカニクス / 機能形態 / 進化 / 絶滅 / 適応放散 / 懸濁物食者 / 最適化 / CFD |
Research Abstract |
古生代に特異の腕足類における流体力学的特性を明らかにする上で,初年度の目標は,受動的採餌流の形成機構と殻形態の関係を力学的に理解することであった.その計画通り,流水装置と模型を用いた実験および数値流体シミュレーションを用いて,スピリファー形態型腕足類の殻形態の持つ流体力学的な機能特性を見出すことに成功した. スピリファー類の中空模型を用いた流水実験の結果,殻の側方口から水が流出する傾向が認められた.同時に,殻の内側で旋回流を発生させた.この旋回流は,スピリファー類の持つ螺旋状の採餌器官を取り巻く流れとなるため,受動的な採餌を行ううえで都合が良い.したがってスビリファー類の殻形態は,殻内側で渦状旋回流を形成するための適応形態であったと考えられる.さらに,数値流体解析を行った結果,スピリファー類に特徴的な殻中央部分の湾曲形状であるサルカス付近で圧力が増加し,サルカス開口部から強く流入することがわかった.一方,実験によって可視化された殻内側の旋回流は,スピリファー類の触手が配列した螺旋状の採餌器官と同調する螺旋状の旋回流であることがわかった.一連の結果から,サルカスは,殻内側で生じる受動的な螺旋状の採餌流を形成するための流入領域として,高い圧力を発生させる機能を持つことが解明された. これらの研究成果によって,第二年度に行う予定の「殻形態の採餌効率」を進める上での下地が整ったと言える.この研究は腕足動物を題材としているが,異なる生物においても生物の形態を機能的特性から包括的に評価できる可能性を秘めた,モデル研究となるであろう.以上の点を鑑みると,研究成果は独創性・萌芽性に富み,今後の進化古生物学の新しい発展に寄与したと言える。
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Research Products
(8 results)