2009 Fiscal Year Annual Research Report
ミリカンの固有機能理論を手掛かりとした人間の自然的側面と文化的側面の関係の解明
Project/Area Number |
08J10806
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
筒井 晴香 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 慣習 / 規範性 / デイヴィド・ルイス / ルース・ギャレット・ミリカン / マーガレット・ギルバート / 性差 / 脳神経倫理学 / 社会科学の哲学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、R・G・ミリカンの哲学を手掛かりとして人間の自然的側面と文化的側面の関係を解明する統一的理論を構築することである。本年度は、人間の文化的側面の典型的な要素の一つである慣習(convention)に関する考察を深めた。 具体的には第一に、前年度に引き続いて、慣習に関する哲学的理論の中でも代表的なデイヴィド・ルイスの慣習理論の眼目を、心の哲学における解釈主義の主張を手掛かりとして明示化する議論を洗練させ、論文として刊行した。さらに、ルイスの慣習概念を慣習の規範性という観点から問い直すマーガレット・ギルバートの議論、そして、ギルバートの議論を受け、実験によって慣習の規範性を問うことを試みたフランチェスコ・グアラの研究に注目し、特に実験という手法による慣習概念の解明の可能性を検討した。結果として、慣習概念の研究においては、理論構築と実験を通した理論の精緻化のみならず、日常の社会的場面における我々の認知・行動のあり方に関し、様々な分野で得られている知見に目を配ることが不可欠であることを示した。 第二に、人間の自然的側面と文化的側面が複雑に絡み合う現実的・具体的な問題として、性差に関する脳科学と社会との関係において生じうる問題に注目し、考察を行った。人間の性は単に生物学的なものでも、文化的・社会的なものでもなく、両者が不可分に絡み合っている。本研究ではこのような認識の下、性差に関する脳科学と社会との接点において生じている・生じうる問題を整理し、解決のためには脳科学的知見の位置づけ方のみならず社会のあり方をも問い直す視点が必要であることを論じた。これは人間行動を文化的・社会的かつ自然的なものとして捉えることを目指す本研究の応用的部分として位置付けられる。
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Research Products
(8 results)