2008 Fiscal Year Annual Research Report
すざく衛星とGLAST衛星を軸とした未同定ガンマ線天体の解明
Project/Area Number |
08J10819
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岸下 徹一 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 宇宙X線 / ガンマ線 / アナログ回路 |
Research Abstract |
ガンマ線連星は、最近あいついで発見されたTeVガンマ線で明るい銀河系内の天体であり、極めてコンパクトな宇宙の高エネルギー粒子加速器と目されている。本年度の研究では、TeVガンマ線フラックスが連星の軌道周期(3.9日)と同期していることが初めて発見されたガンマ線連星LS5039に着目し、X線天文衛星「すざく」を用いて連星の軌道周期を完全にカバーする長期観測を行い、その放射機構の理解に迫ることを目的として、多波長観測データと合わせて解析を行った。その結果、TeVガンマ線とX線は共に伴星の周りをまわるコンパクト天体(ブラックホールあるいは中性子星)の軌道位置に従って変動し、正確な周期性を示していることが初めて明らかとなった。さらに70keVまでの硬X線領域で、軌道の各位相でのスペクトルを決定し、そのスペクトルの形と時間変動から標準的な衝撃波加速理論に照らし合わせ、X線での放射を加速された電子からのシンクロトロン放射、TeVガンマ線を同一分布の電子による伴星からの光子の叩き上げ(逆コンプトン散乱)によって説明が可能であることを示した。この場合、TeVガンマ線に対するX線の強度は、そのまま放射領域における磁場の強さを与え、1ガウス以上と決定される。X線とTeVガンマ線の観測結果は、加速電子のエネルギー損失が従来の放射によるエネルギー損失だけでは説明ができないことを示しており、我々は、マックスプランク研究所との共同研究によってLS5039における粒子加速が狭い領域(約10^<11>cm)で粒子加速のタイムスケールが約1sという極めて効率的に生じていることを示した。 一方、次世代の宇宙硬X線検出器の読み出し回路の開発においては、低消費電力と低雑音特性を満たした270μm角4×4の2次元アナログASICの開発を中心となって進めてきた。その性能評価試験においては、対して雑音特性と信号特性を詳細に評価し、1チャンネル当たりの消費電力を150μWに抑え、当初の雑音特性の目標であった100e^-(rms,換算電子雑音)を達成するアナログASICの開発に成功した。
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