2008 Fiscal Year Annual Research Report
LHC・ATLAS実験におけるブラックホール探索の研究
Project/Area Number |
08J10829
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
兼田 充 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 素粒子 / 高エネルギー / LHC / ATLAS / 加速器 / 余剰次元 / ブラックホール |
Research Abstract |
20世紀の素粒子物理学において、標準理論は実験結果を非常に良く表わし、成功した理論であった。しかし、その理論にもいくつか不自然な部分があり、そのうちの一つが重力だけが他の力に比べて非常に小さいと言う、いわゆる階層性問題である。これを解決する一つの解が余剰次元の存在であり、もしTeV程度のエネルギースケールにコンパクト化されているとすると、重力がそのエネルギースケールから急激に大きくなり、階層性問題を解決する可能性がある。 LHC加速器は、史上初めてTeVスケールの物理を直接探索出来る実験であり、余剰次元を含めた新しい物理の発見が期待されている。私は現在、余剰次元の存在の証拠になるブラックホールをLHCで生成しATLAS検出器で発見するための研究を行っている。ブラックホールは、非常に生成断面積が大きく、また大量の高エネルギー粒子を発生するため、バックグラウンドから区別しやすく、実験の非常に初期の段階で発見されることが期待されている。 LHC加速器は、平成20年の9月に稼働を開始する予定であったため、昨年度の前半はそれに向けて観測方法の確立を行い、パラメーターによっては、現在までの実験結果に反しない範囲で1日分のデータですら観測することが可能であるということが分かった。 LHC加速器の運転については、実際には、昨年度動き出してすぐに加速器の故障により、実験的データは全く取れない状態で終わってしまい、次に稼働するまで1年間再びデータがない状態になってしまった。また、次に稼働する際は当初の予定の14TeVの重心系衝突から10TeVの衝突へとエネルギーを下げることが決定したため、上記の観測方法を全て10TeVのシミュレーションで検討しなおした結果、10TeVでも最初の1年で十分存在の有無を議論出来ることが分かった。 現在も実験開始に向け、さらに実際に発見された際に余剰次元の情報をいかに取れるか等についても研究を進めている。
|
Research Products
(3 results)