2009 Fiscal Year Annual Research Report
LHC・ATLAS実験におけるブラックホール探索の研究
Project/Area Number |
08J10829
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
兼田 充 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 素粒子 / 高エネルギー / LHC / ATLAS / 加速器 / 余剰次元 / ブラックホール |
Research Abstract |
スイス、ジュネーブ郊外で行われているLHC加速器実験は、最終的に陽子陽子衝突重心系14TeVのエネルギーで実験を行う様設計され建設されてきた実験である。 申請時である3年前には、2007年に実験を開始し、2009年度までに数1/fb程度のデータがとられている予定であった。しかし、2007年、2008年共に、実験開始直後に大きな事故があり、不幸にも2年実験開始が遅れてしまった。 しかし、昨年、2009年12月に、世界最高エネルギーである、2,3TeVの衝突を実現し、4月現在当初の半分のエネルギーである7TeV重心系エネルギーの衝突実験が行われている。 従って、2009年度に関しては、実際のデータ取得に向けての準備研究が主なものとなった。特に、最初のしばらくの期間は、実験のデザインエネルギーの14TeVではなく、10TeVもしくは7TeVのエネルギーに抑えて実験を開始することが決定されており、まずはこれらのエネルギーでもう一回シミュレーション等をやりなおした。この結果、7TeVの重心系エネルギーでも、今年得られる予定であるデータ量(数10/pb~100/pb)で3TeV程度までのブラックホールの探索は可能であると言う結果を出した。 また、同じく重力効果が余剰次元により強く現れてくる結果観測される可能性のある、ストリングボールやクォンタムブラックホールに関しても研究を進め、2010年度のデータで十分優位な結果(これまでの結果を大幅に上回る探索領域を見ることが可能であるという)を得た。 コラボレーションに対しては、大量に得られるATLAS実験のデータを、ユーザー個人単位で使えるようにするため、必要な情報とイベントに絞ったデータフォーマットの作成に参加し、特にjetやmissing Etのパフォーマンス関連用のフォーマットを作成した。 さらに、標準理論のjetグループやexotic物理を行っているグループ用のデータフォーマットを考案し、実際にデータから作成し配布している。 現在、2年遅れではあるが、遂に実験が始まり、順調にデータ取得が進んでいる。これらのデータを用いて、余剰次元、特にブラックホールの探索の物理解析を行い、今年度中に論文を書く予定である。
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