2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J10914
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新倉 貴仁 The University of Tokyo, 大学院・情報学環・学際情報学府, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ナショナリズム / 言説 / 技術 / <作為>の論理 / 知識人 |
Research Abstract |
本研究は近代日本におけるナショナリズムの知識人の諸言説の編制を追跡することを目的とする。本年度に実施・発表した研究のうち、「海賊版としてのナショナリズム」では、ナショナリズムとメディアの関係性を論じつつ、主体-表象-起源から言説-技術-反復へと議論の位相をうつす必要かおることを論じた。「ナショナリズム研究における構築主義」は構築主義と言説分析がナショナリズムという問題に向かうときに直面する理論的課題を扱い、構築の論理の追跡を通じて構築の<外>に接近する必要があることを論じた。いずれも、本研究の重要な理論的視座となるものである。他方、本年度に実施・発表した研究のうち、「ナショナリズムの知識人--福澤諭吉と構成的権力」および「存在拘束性のナショナリズム--丸山眞男と知識社会学」は、本研究の分析編における第一の局面となる。福澤諭吉の諸言説を技術とグローバリゼーションの網の中に再配置することで、力能への志向と秩序への志向の緊張関係を見出した前者の研究は、ナショナリズムにおける啓蒙と工学の二つの契機へと分析の軸を定めるものである。丸山眞男のナショナリズムが、マンハイムの知識社会学が中心とする「存在拘束性」のテーゼに強く規定されたものであることを示した後者の研究は、作為や決断といった行為性からナショナリズムを考察する必要を訴えるものである。この分析編で開かれた分析の領野を、上述の理論的視座を通じて考察することが次年度の課題であり、「陸羯南と国粋主義」「後藤新平と衛生思想」「三木清と構想力」の三つの対象において、<作為>の理論とナショナリズムの交錯する地点を観察・記述・分析することをめざす。
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Research Products
(4 results)