2008 Fiscal Year Annual Research Report
米国美術大学で学ぶアジア人留学生のアイデンティティと社会的影響
Project/Area Number |
08J10915
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荒木 慎也 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 美術教育 / 東京藝術大学 / 留学生 / 石膏像 / 東京大学 / アメリカ |
Research Abstract |
美術学校の学生へのインタビュー調査で、留学生の多<が留学前に自国で美術教育を受けており、留学生としてのアイデンティティ形成に非常に深く関わっていることが明らかになった。同時に、各国の美術教育の根幹をなしている19世紀の美術アカデミーの教育システムへの理解を深めることが、今日の美術教育が直面している問題を分析する上で非常に重要であることも明らかになった。そのため、東京大学、東京芸術大学、武蔵野美術大学、多摩美術大学で美術教育用の教材資料にかんする現地調査、および教職員へのインタビュー調査を行った。東京大学では、工学部建築学科に収蔵されている工部大学校時代の教材に関する資料を収集した。東京芸術大学では、大学美術館が所蔵している教材の購入台帳を調査し、ならびに大学の施設である石膏デッサン室の収蔵品に関する調査を行った。多摩美術大学では、八王子校舎のデッサン室および上野毛校舎の収蔵庫に収蔵されている教材を調査した。この過程で、行方不明となっていた彫刻であるヴィンツェンツォ・ラグーザ作の「大鳥圭介像」が発見された。この彫刻は、歴史的に重要な資料であるため、2009年度中に新出資料として発表する予定である。これら日本での調査は、大学や美術館に未整理あるいは未登録のまま収蔵されている資料を扱うものであり、また一部の美術館においては今後の展覧会に関する情報を機密扱いにする必要があるため、調査には慎重を期する。 さらに、これら美術教育教材にかんする歴史資料を収集する為、2009年1月から2月にかけてイタリア、フランス、ベルギー、イギリス、デンマークの五ヵ国を訪問し、各国の国立美術館とその複製工房、そして国立美術学校で教材資料の保管状況や現在の使用状況を視察し、文献資料を収集してきた。その結果、いずれの機関でも美術教育に関する資料が極めて劣悪な環境で保管または放置されており、早急な保護および研究が迫られていることが判明した。
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Research Products
(2 results)