2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J11030
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
裴 寛紋 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 本居宣長 / 古事記伝 / 古事記 / 朝鮮認識 / 国学思想 |
Research Abstract |
今年度は、研究課題全体の計画のうち、一つ目のテーマであった、宣長の考えた世界像の背景となる対朝鮮観の問題に関してまとめることができた。それは具体的には、朝鮮問題を扱う宣長言説の分祈とともに、江戸時代における対朝鮮認識の諸基盤の検討から得られた研究成果である。その研究成果を「『古事記伝』が作った「皇大宮の始り」の物語-「韓国」は「空国」なり-」と題して投稿した結果、『上代文学』(一〇二号、二〇〇九年四月)の掲載が決まった。 小論は、『古事記』の天孫降臨神話に表れる「韓国」という言葉に対し、「韓国」は朝鮮半島とは無関係の「空国」だと解釈する、『古事記伝』の注の分析を試みたものである。『古事記』の当該箇所は、実際、古代朝鮮と日本との緊密な交流や影響関係などを論じる際に格好の素材として利用されたりもしてきた部分だが、『古事記伝』が何故「韓国」を「空国」と書き換えたのかについては今まで突きつめたことがなかつた。小論はそれに対し、宣長が「韓国」を「空国」と改めることで「韓」とのかかわりを排除しようとしたわけではないことを明確にしたのである。 なお、その前提になる問題意識については、二〇〇九年四月十八日に韓国外国語大学(韓国ソウル市所在)で開かれる韓国目語日文学会春季学術大会にて、「「韓」の痕跡と否定-宣長を読む立場から-」という題目で口頭発表を行う計画である。
|