2008 Fiscal Year Annual Research Report
近代移行期中央アジアにおける地方政権の社会統合-ヒヴァ・ハン国の事例から-
Project/Area Number |
08J11077
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩谷 哲史 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 歴史学 / 地域研究 / 国際情報交換 / ウズベキスタン:ロシア / 史料学 |
Research Abstract |
本研究は、19世紀から20世紀初頭にかけての中央アジアにおける政治権力の社会統合のあり方を、ホラズム地方に成立したコングラト朝政権の事例に照らして明らかにすることを目的としている。初年度である本年度は、その基礎となる1)関連史資料の収集および調査・研究、および2)1)の成果に基づくコングラト朝政権の社会統合を目指した諸政策の分析、を行った。1)については、ロシア科学アカデミー東洋学研究所サンクトヘテルブルグ支部およびロシア国立公共図書館において史料調査を行った。その結果、1873年ロシアのヒヴァ遠征に随行した東洋学者クンA.L.Kunによる、コングラト朝統治下のホラズム地方に関する網羅的な調査記録(未公刊の手稿)には、当地方の古代からの歴史、民族構成、諸都市・集落の状況、またコングラト朝政権の構造、租税制度に関する詳細な記述が含まれていることが明らかになった。今後本史料の内容を現地語史料(年代記および文書史料)と対照する作業を進めていく。また2)については、19世紀前半にコングラト朝政権がホラズム地方に様々な集団を移住させた政策について、国内学会・シンポジウムにおいて2度の報告の機会を得た。その結果、諸集団に対する抑圧と一様にとらえられてきたコングラト朝政権の移住政策は、諸集団が移住に応じた背景および移注後も政治的状況により自由に移動を繰り返しえた集団の存在が明らかになることで、一様に抑圧とは言えず、各集団の事例に即した再評価が必要であることを指摘した。今後移住政策の再評価を進めることで、コングラト朝政権の諸集団の統合、ひいては社会統合のあり方を明らかにしうるものと考えている
|