2008 Fiscal Year Annual Research Report
セラミックス界面における原子ダイナミクスに関する研究
Project/Area Number |
08J11088
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
中川 翼 National Institute for Materials Science, 光材料センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 拡散 / 酸化亜鉛 / チタン酸バリウム / 二次イオン質量分析 / イオン注入 / 粒界 / 双結晶 |
Research Abstract |
本研究では、セラミックス中の拡散をキーワードとして、材料中の主成分元素の拡散である自己拡散、材料に機能を賦活させる添加元素の拡散に関して研究を進めている。添加元素の拡散に関しては、添加物自身が周囲の環境を変化させるために、拡散係数が拡散種の濃度に依存し、複雑な拡散挙動を示すことが知られており、添加元素の拡散挙動の詳細な解析はほとんど得られていなかった。本研究では、酸化亜鉛中でドナー元素として振舞うAl,Inの拡散の詳細な解析を行い、それらの拡散係数が自身の濃度の2乗に比例するという現象を発見し、それに基づいた添加元素の拡散のメカニズムを提案した。また、濃度が高い領域でより高い拡散係数が得られるため、このメカニズム(濃度依存拡散)で添加元素を拡散させると、添加物の拡散領域と未拡散領域の界面が非常にシャープになる(外部から拡散させた元素は表面の高濃度領域では拡散が速くほぼ均一に分布するが、表面から離れた領域に行くに連れ濃度の低下とともに急速に拡散が遅くなり、内部に拡散しにくくなりシャープな界面が形成される)。つまり、この濃度依存拡散を用いてpn接合などを作製することで高効率なデバイスを作製できる可能性を秘めており、この現象は、拡散の基礎としてだけでなく応用面でも非常に重要であるといえる。また。自己拡散においては、チタン酸バリウムの異常粒成長に注目して、材料中に起こるマクロな現象である粒成長と原子レベルでの拡散との相関に注目して研究を行っている。その結果、チタン酸バリウムの中の酸素拡散は粒成長挙動の大きく異なる試料中でもほとんど変化が無いことが解った。この結果は、粒成長挙動は酸素ではなくカチオン元素の拡散に支配されているという可能性を示唆するもので今後BaやTiといったカチオン元素の拡散に注目して研究を進めていく方針である。
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