2008 Fiscal Year Annual Research Report
動的構造変化を発現する、新規アロステリック制御型不斉触媒の創製
Project/Area Number |
08J11103
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
益子 智之 The University of Tokyo, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 医薬品合成 / 触媒的不斉合成 / 大スケール反応 / ランタノイド / アミド型リガンド / アミノ化反応 / 糖尿病合併症治療薬 / 3成分触媒 |
Research Abstract |
AS-3201はアルドース還元酵素阻害剤であり、糖尿病の合併症を抑える有望な経口治療薬として現在臨床開発中である。AS-3201は不斉中心を一つもつスピロスクシンイミドであるが、そのエナンチオマーは活性が極めて弱いため光学分割が必須である。従来はシンコニジンを用いた光学分割を行っていたが、工業スケールでシンコニジンを回収・再利用することは非現実的であり、合成効率の低下及び廃棄物の増加が問題になっていた。そこで私は市販化合物より1段階で合成可能なスクシンイミドに対して触媒的不斉アミノ化反応を行うことにより、AS-3201の効率的な合成経路の確立を試みた。その結果、La(O^iPr)_3とバリンからカラムフリーに容易に調製可能なアミド型リガンドを用いた際に目的のアミノ化反応が高い立体選択性にて進行することを19年度までに見出している。20年度は本触媒系を工業スケールでも適用可能なものにすることを目標とした。まず、空気に不安定である(La(O^iPr)_3の代わりに空気中容易に取り扱い可能なランタン源の検討を行ったところ、有機溶媒にも比較的溶解性の高いLa(NO_3)_3を用いた際に良好な結果を与えた。尚、La(O^iPr)_3は塩基性であるのに対しLa(NO_3)_3は中性の塩であるため、塩基の添加が必須であった。種々の塩基を検討したところ、アキラルな塩基を添加した際何れも反応は進行するものの不斉収率は中程度にとどまった。そこでキラルな塩基を検討したところ、バリン^tBuエステルを塩基として用いた際に収率、立体選択性ともに満足いく結果が得られた。さらに本反応は100gスケールでも進行し、酢酸エチル中空気下わずか1mol%の触媒量で>99%収率、91%eeにて目的物を与えた。得られた生成物は5段階の化学変換と1回の再結晶により光学的にも純粋なものへと変換できることを確認している。当研究は現在製薬会社にてプロセス研究が行われており、近い将来工業化されることが期待されている。
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Research Products
(6 results)