Research Abstract |
当該年度に実施した調査は,1)サーベイ調査の実施,2)サーベイ調査結果の統計解析,3)分析結果の論文へのとりまとめ,の3点である。 1)では,データフォーラム社製「工場ガイド西日本I改訂第2版(CD-ROM版)」に掲載されていた工場・事業所のうち,従業員数が100人以上で,明石市,芦屋市,尼崎市,神戸市,西宮市のいずれかに所在する,倉庫や卸拠点をのぞく製造活動を実施していると推定される工場・事業所に対して質問票を送付した。最終的に分析の対象となったサンプル数は97だった。 2)では,これら97サンプルについての統計解析を実施した。結果として,工場・事業所の現代製造戦略の程度が高く,かつ個別ショックの程度が高いとき,工程別利益情報の活用度合いが高まる,といった現代の生産システムにおける管理会計の規定要因を特定する事実の発見に成功した。 3)では,これら発見事実を,博士学位請求論文にとりまとめた。この論文が博士学位に相当すると判断されたのは,次のような3点の論文の貢献が認められたからだと判断できる。1点目は,これまで特殊な事例として研究されてきた利益情報によるオペレーション管理について,その実態を統計的に明らかにし,されたには規定要因を理論的に明らかにしたことである。2点目は,コーディネーション理論という,これまで管理会計研究ではあまり用いられることがなかった理論が,情報選択分析において説明力を有することを実証し,新しい説明理論の可能性を示唆した点である。3点目は,抽象的な財務情報ではなく,具体的な管理会計システムの諸要素を対象として分析を実施した点である。これらの貢献をもって,本論文は学位相当と判断されたといえる。
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