2009 Fiscal Year Annual Research Report
古代ローマとその近隣諸国:前3世紀から後2世紀地中海世界諸国の国家構造と対外政策
Project/Area Number |
08J11154
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 雅之 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ローマ / 第二次マケドニア戦争 / エジプト分割協定 / ロドス / ペルガモン |
Research Abstract |
本研究の第二年目の作業は、紀元前三世紀から紀元前二世紀の変わり目の頃に生じた、第二次マケドニア戦争をめぐる、ローマ、ロドス、ペルガモンおよびその他東方諸国の外交政策を探ることを主な内容とした。これについて現在、その成果を『史学雑誌』に投稿しその審査を受けている最中である。また新たな年度にはこれに付随したテーマを扱って学会報告を行なうことが決まっている。 先行研究はこの戦争が行なわれた理由を、東方のマケドニアとシリアによる、所謂エジプト分割協定に対し、ローマが危機感を抱いたことに見出すべきか否かという点を一つの軸として、論争を繰り広げてきた。本研究はこうした議論に対し、視点の中心をローマに置きつつ、晩秋に派兵を行なわざるを得なかったローマの国内情勢と、その準備と並行して行われた東方各国への働きかけの内容、そしてそもそもローマに東方への再度の派兵を促した、ロドスとペルガモンを中心とした東方情勢に関する分析を行なった。そしてそれらを通じて、この戦争がローマにとって、協定情報に触発された防衛的、ないしは予防的なものではなくむしろマケドニアとの再度の開戦を望んでいた中、東方情勢の転換にその好機を見出したが故の、突発的な報復戦争であったと見るべきことを示した。 次なる学会報告では、今度は視点の中心を同事件におけるロドスとペルガモンに置いた内容を予定している。主たるテーマは、上述の協定情報をめぐる状況が、ローマの場合とは異なり、両国の外交行動に影響を与えたと考えうるのではないか、という点を問うことである。
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