2008 Fiscal Year Annual Research Report
「創造的表現のための鑑賞」を促す美術展示及び教育プログラムの開発
Project/Area Number |
08J11161
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
縣 拓充 The University of Tokyo, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 創造的教養 / 美術 / 創造性 / 心理学 / ミュージアム / 教育 |
Research Abstract |
本研究の目的は、「鑑賞と創造を一体のものとして」芸術文化と関わっていけるような人々を育むための美術展示、及び教育プログラムの開発を行うことであった。その上で1年目は、美術館における「創造や表現を促進する展示」の開発を行い、それが来館者に及ぼす教育的効果の検討を行なうことを予定していた。 本年度はまず、一般の人々が持つアートや創作に対するイメージと、鑑賞・表現への動機づけとの関連性を調べるため、質問紙を作成し、大学生に対して実施した。分析は構造方程式モデリングを用いて行なった。その結果、創作活動に対するステレオタイプは、自らが表現活動を行うことに対する効力感を低下させる役割を果たしていること、またその効力感は、鑑賞や表現への動機づけに対して高い説明力を持っていることが示された。 その後は、駒場博物館で開催された美術展示、「behind the seenアート創作の舞台裏」の準備に多くの時間を費やした。アーティストへのフィールドワークを行ないながら、美術展の中で展示する創作プロセスの分析を進め、さらに、分析によって得られた知見を基に、キュレーションや展示空間全体のデザイン、展示テキストの執筆などを行なった。企画展は、当初の予定通り、10月から約2ヶ月間開催された。この企画展開催中に、この展示が来館者に及ぼす効果を検討するため、ペアになった学生に自由に展示を見てもらい、その間の会話を録音し、合わせて鑑賞の前後にインタビューを実施した。現在、このデータに関しては分析中である。 さらに、展示期間中に、展覧会の鑑賞と、実際に創作を体験するワークショップとを組み合わせた授業を行った。この実践の効果は主に質問紙調査によって検討した。その結果、美術展示という形態の介入によって変えることが可能な部分、及び、実際に体験させることで初めて変化させることが可能な部分が明らかになった。
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