2008 Fiscal Year Annual Research Report
セルゲイ・エイゼンシュテインとアニメーション:エイゼンシュテインの芸術理論研究
Project/Area Number |
08J11176
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
土居 伸彰 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | セルゲイ・エイゼンシュテイン / アニメーション / ユーリー・ノルシュテイン |
Research Abstract |
ロシアの映画作家セルゲイ・エイゼンシュテインが1930年代以降に残した芸術理論をアニメーションという切り口から包括的に考察することを目的とする当研究は、2000年代の出版によりようやくその全貌を明らかにしつつある芸術理論家としての新たなエイゼンシュテイン像に迫るものである。 論文「フレームを超えて-エイゼンシテイン芸術理論における「イメージ」について」は、晩年のエイゼンシュテインがアニメーションという表現形態に惹かれた理由を、エイゼンシュテイン芸術理論の最重要概念のひとつ「イメージ」-実在はせぬが、作品の受容において不可避的に知覚されてしまうもの-を切り口にして分析することにより、芸術理論家エイゼンシュテインの基本的立場を明らかにするものとなった。 また一方、論文集『アニメーションの映画学』に寄稿した「柔らかな世界-ライラン・ラーキン、そしてアニメーションの原型質的な可能性について」は、エイゼンシュテイン理論においてあらゆるものへと変容可能であることを指す「原型質性」の概念を軸にして、アニメーションの美学的な考察を行うものであり、エイゼンシュテイン理論が映画に留まらない有効性を持つことを示すものとなった。 さらに、論文「ノルシュテイン『話の話』にみられるエイゼンシュテイン理論の影響について」はエイゼンシュテイン理論の継承者であるアニメーション作家ユーリー・ノルシュテインが後期のエイゼンシュテイン理論に受けた影響を、『話の話』という作品の考察を通じて明らかにした。この点に関しては、ロシアへの渡航による資料収集及びノルシュテイン氏への直接の取材を行うことができたので、今後さらなる研究の進展が見込まれる。
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Research Products
(7 results)