2008 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫の記憶・学習にもとづく適応戦略:理想自由分布を実現する多様な戦術
Project/Area Number |
08J11196
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀部 直人 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 最適採餌戦略 / Levy flight / ショウジョウバエ / カオス / 時系列解析 / 記憶・学習 |
Research Abstract |
本研究の目的は、移動能力や記憶力に限界がある実際の生物が、それらに制約がない場合に実現されるといわれる理想自由分をいかにして実現するかを解明することである。理想自由分布は複数個体の行動の結果生じるのであり、換言すれば創発現象を含んだ形での個体の戦術の総和として現れる。 まず、野生型と短期記憶に変異のあるショウジョウバエそれぞれ1匹が餌を探し歩く軌跡を取得し解析した。ここで得られた主な結果は、(i)野生型と記憶の変異体とで、適応的とされるLevy flightの当てはまり具合にほとんど差が見られないこと、(ii)歩行には少なくとも2つの運動モードがあり、一つはノイズ的であり、もう一つはカオス的であることである。この結果は、昆虫において高度な情報処理を行うキノコ体での情報処理と、歩行パターンを生成すると考えられる胸部神経節のカップリングが最適採餌の文脈ではさほど重要ではないと解釈できる。 次に、複数個体の歩行軌跡を自動で追跡するシステムの開発を行った。 このシステムの開発に成功したことにより2個体の追跡が可能となったため、ショウジョウバエ2個体での採餌戦略の実験・解析を開始した。現段階での実験・解析の結果は2個体で採餌を行う場合であっても1個体で採餌を行う場合と同様の歩行軌跡を描くというものである。 さらに、Levy flightの理論的解析を行った。Levy flightは餌がランダムかつ少量存在する場合での最適採餌戦略とされていたが本研究により餌の布や量がランダムではなくても最適採餌戦略となりうることが明らかとなった。さらに、餌の分布がフラクタルとなる場合には捕食者の側と被食者との側で適応度の指標として異なる統計量を使う必要性が生じるが故に、被食者がフラクタルに分布することは捕食者・被食者両方にとって不利益になるという非常におもしろい結果が得られた。
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Research Products
(6 results)