2009 Fiscal Year Annual Research Report
世紀転換期における日仏文化交渉史に関する総合的研究(1890-1910年)
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08J11205
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 久美子 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 日仏文化交渉 |
Research Abstract |
本年度は、フランス政府給費を受給し、INALCO(フランス国立東洋言語文化研究学院)に10月から研究員として留学することが決まったため、渡仏前までに日本国内で行うべき資料調査、整理を中心に研究を遂行した。 具体的には、主要な研究対象のうちの一人である、フランス人挿絵画家Felix Regamey(フェリックス・レガメー)の第二回来日時(1899年)の足跡を、当時の日本の新聞、雑誌から再度洗い直すと同時に、パリ日仏協会会報に見られるレガメー関連記事を確認し直し、彼が協会創設期に果たした役割をより明確なものとした。またパリ日仏協会については、現存が確認される全ての号の主要記事一覧を作成し、記事内容の傾向を分析した。この作業により、パリ日仏協会の性格をより具体的に把握することができるようになったと考える。 Andre Bellessort(アンドレ・ベルソール)もまた、1899年に来日したフランス人文学者であるが、彼の著作からは日本の文学者たちと僅かなりとも関係があったことが伺える。そこで、彼との繋がりが見られた永井荷風や上田敏、与謝野晶子らの著作や、当時の新聞・雑誌から、ベルソールに関する記述についての基礎的調査を行った。 雑誌掲載論文としては、2009年6月に開催されたシンポジウム「ひとつの京都学美術・工芸・建築・都市」についてのシンポジウム報告を執筆した。本報告は『ジャポニスム研究』(2009年12月刊行予定)に掲載が決定している。シンポジウムは、京都国立近代美術館で開催された「京都学前衛都市・モダニズムの京都」展に併せて行われたものである。展覧会は、現在、京都国立近代美術館が建つ岡崎の地で、1895(明治28)年に開催された第四回内国勧業博覧会を起点とし、絵画、陶芸、染織、建築、映画など多様な切り口から、近代都市、明治モダニズム都市としての京都を再考するものとなっていた。自らの研究対象と一致する時代を取り扱ったものであると同時に、内国勧業博覧会という、対外輸出を想定した殖産興業の装置が主要テーマであったため、日仏交渉を主題とする私の研究課題とも密接に関係する展示、シンポジウムであった。また、「京都」という都市自体もテーマのひとつであり、京都という都市の近代化についての考察を深めるものであったが、本展を契機として、京都市が明治初年からリヨンに人材を派遣していたこと、フランス語教育が盛んな土地であったこと、パリ日仏協会より早く、京都日仏協会が1900年3月には設立されたことなどを思い起こし、京都とフランスという視点も再考察すべきだと実感できたことは大きな収穫であった。
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Research Products
(1 results)