2008 Fiscal Year Annual Research Report
アダム・スミス自然神学の倫理学的含意-功利的デザイン論と人間本性-
Project/Area Number |
08J11236
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢島 壮平 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 哲学 / 倫理学 / イギリス哲学 / アダム・スミス / 自然神学 / 道徳感情論 |
Research Abstract |
本研究は、「自然の創造主」としての神の意図・目的がアダム・スミスの道徳哲学の内部で理論的前提として重要な役割を果たしていることを示し、そのことでさらには、『道徳感情論』、『国富論』等の著作を含めたスミス哲学全体の理論的前提としての神に光を当てることを目的としていた。特に本年度は、『道徳感情論』において展開された道徳判断理論及び行為の動機付け理論の明瞭な理解に努めると共に、それらがいかにして自然神学的前提を内包しているかを明確にすべく読解を進めることを目標としていた。研究成果として特筆すべきであるのは、学会誌に投稿し査読の上掲載された2本の論文である。これらの論文はそれぞれ、『感情論』第2版及び第6版における第3部増補改訂並びにスミスの徳概念との連関、並びに、『感情論』第4部で詳述されている有用性概念とそのデザイン論との関連性に関する論文である。スミス道徳哲学研究自体が手薄である本邦において、これらの論文を発表したこと自体に意義があると言えるが、特に、前者の主題に関する論文は、倫理学における伝統的問題である心理的利己主義とスミス道徳哲学との間の連関を明らかにした点において、また、後者の主題に関する論文は、とかく軽視されがちなスミスの自然神学と道徳哲学との関係に光を当てた論文として、学術的重要性を持つと言えるだろう。さらに、研究室紀要に掲載された論文では、アダム・スミスの道徳哲学と現代英米系道徳哲学との接点を模索することも試みた。具体的には、現代のメタ倫理学において扱われている多様な主題の中の一つに動機付けの内在主義/外在主義の問題があるが、スミスが『感情論』において展開している道徳判断と動機付けに関する理論が、こうした観点からどのように捉えられるのかを検討し、スミス道徳哲学の現代的意義を追究した。
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Research Products
(4 results)