2008 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマー病においてアポリポ蛋白Eがβアミロイド凝集と代謝に及ぼす影響
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08J11308
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀 由起子 The University of Tokyo, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アルツハイマー病 / アポリポ蛋白 / 線維化 |
Research Abstract |
アルツハイマー病(AD)の発症メカニズムとして、脳内に産生されたアミロイドβペプチド(Aβ)が線維化し蓄積する過程が神経細胞死を招くというアミロイド仮説が広く支持されている。また、脳内にはAβと相互作用する分子が多数存在することも知られている。そのため、AD、特に孤発性ADの発症機序を解明する上で、このようなAβと密接に相互作用する分子がAβの線維化・蓄積に及ぼす影響を解明することは必須である。申請者はこのような分子の中で、特にその遺伝多型のε4アレルがAD発症の強力なリスクファクターであるアポリポ蛋白E(apoE)に着目し、apoEがAβの線維形成及び代謝過程に与える影響をアイソフォームごとに検討している。まず、線維化したAβと特異的に結合する性質により線維化の指標として用いられるThioflavin Tの蛍光値と、ゲルろ過を組み合わせた実験手法を確立することにより、各アイソフォームapoEがAβ線維化過程に及ぼす影響を、特に線維形成中間体であるprotofibril Aβの形成に注目して検討を行った。その結果、apoEのアイソフォーム特異的なprotofibril Aβの安定化効果(E4<E2<E3)があることを見出し、この安定化効果の程度に一致して、さらに不溶性を獲得したfibril Aβの形成が抑制されることを示した(E4<E2<E3)。さらに、これらのアイソフォーム特異的な効果がapoEとAβの結合によって引き起こされるかを検証するために、SDS-PAGE、binding assayやクロスリンク(PICUP法)を用いてapoEとAβの結合を検討した。その結果いずれの実験方法によっても両者の結合が示されたが、SDS-PAGEの検討においてのみアイソフォーム特異的なSDS耐性な結合が観察された(E4<E2=E3)。このことは、apoEはAβと2種類以上の結合様式で結合し、またこのうちSDS耐性な結合様式はapoEアイソフォーム特異的であることを示唆している。これらの結果から、apoEはAβ線維化過程でアイソフォーム特異的にAβとSDS耐性な結合を形成し、その線維化の速度を調節することでAD発症に関与している可能性が考えられた。
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Research Products
(1 results)