2008 Fiscal Year Annual Research Report
恐怖記憶を司る神経回路〜単一細胞レベルで全脳を可視化する新手法による解析
Project/Area Number |
08J11329
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野村 洋 The University of Tokyo, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 記憶・学習 / 扁桃体 / イメージング |
Research Abstract |
扁桃体外側核における恐怖記憶の表現様式解明を目的に研究を行った。脳内で情報は、多数の神経細胞の協調した活動で処理されると考えられている。しかし、従来の記憶研究は少数の神経細胞の活動に注目するか、あるいは全体の活動をまとめて評価するにとどまっていた。本研究は、記憶課題時の神経活動を数百の細胞に渡って同時に観察することで、恐怖記憶の表現様式解明を目指した。 マウスに取り組ませる記憶課題の条件検討を行った。適切な条件下でマウスに弱い電気ショックを与えることで、安定した記憶を複数形成させることに成功した。この恐怖記憶を思い出したときの扁桃体外側核の神経活動を1匹のマウスあたり平均300個程度の細胞に渡って観察した。その結果、同じ記憶を思い出した場合は類似した細胞集団が活動し、異なる記憶を思い出した場合は異なる細胞集団が活動した。この結果は扁桃体外側核の細胞集団の活動パターンに恐怖記憶がコードされていることを示している。さらに、観察した細胞集団の安定性について検討した。ある実験環境で電気ショックを受けたマウスは、後で同じ実験環境に戻されると恐怖反応を示す。しかし実験環境にしばらく戻していると恐怖反応は次第に消失する。このようにマウスの行動が変化する際に、活動する細胞集団の変化を解析した。その結果、恐怖反応が消失する条件下で、活動する細胞集団は一定であった。以上から、恐怖記憶をコードする細胞集団は安定であることが明らかになった。 本研究は、多数の細胞の活動を観察して記憶を解析するという新規評価系を提案したことが意義深い。恐怖記憶のメカニズム解明は様々な精神疾患の理解に結びっく点からも重要である。
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Research Products
(5 results)