2008 Fiscal Year Annual Research Report
新しい幾何学的フラストレーション磁性物質の総合的研究
Project/Area Number |
08J11348
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
萩原 雅人 Saga University, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 幾何学的フラストレーション / 中性子回折 / 磁場誘起相転移 |
Research Abstract |
今年度は幾何学的フラストレーション物質M_2(OH)_3X(M:磁性イオン、X:ハロゲンイオン)のうちCo_2(OH)_3Xの研究を中心に行った。過去の研究において、Co_2(OH)_3Clのゼロ磁場における基底状態はカゴメアイス類似の状態とされている。一方、同結晶構造を持つCo_2(OH)_3Brは以前、逐次反強磁性相転移、磁場中で複雑な振舞を示すことを報告した。 今回HをD化したCo_2(OD)_3Brの多結晶体の中性子回折測定を行い、世界で初めてゼロ磁場各磁気相での磁気構造を決定した。Co_2(OD)_3BrにおいてはCo_2(OH)_3Clよりカゴメ格子の相関が強いがゆえに、全体ではなくカゴメ格子の1/3のスピンのみが揺らいでいると思われる。磁場中2K以下においては磁気誘起相転移を示し、5kOe以上で全く別の長距離秩序、20kOe以上ではCo_2(OD)_3Clと同じカゴメアイス類似の磁気構造を持つ。この系はフラストレーション性及びスピン異方性が強く、比較的弱い外部磁場でスピン構造が劇的に変化することが分かった。 ハロゲンを一部置換したCo_2(OH)_3Cl_<1-x>Br_xにおいてμSR測定を行った。ミクロな視点からこの系のスピン揺らぎが置換率xとともに連続的に変化することを観測した。 1軸方向に一様に歪んだ四面体を持つフラストレーションとして他に例がない。 ハロゲン置換及び外場によるスピン制御により、磁気構造及びスピン揺らぎを制御することができる特異な物質である。以上の結果は理論・実験双方のフラストレーション磁性研究に解明の糸口を与えるであろう。
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Research Products
(26 results)