2008 Fiscal Year Annual Research Report
細胞間コミュニケーションと空間的ゆらぎの輻輳による形態形成の解明
Project/Area Number |
08J11425
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 直文 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 比較ゲノム解析 / ゲノム構造 / ゲノム進化・再編 / 微生物ゲノム / シアノバクテリア |
Research Abstract |
近縁生物間のゲノムを比較すると、「コアゲノム」と呼ばれる、ゲノム間で共通である遺伝子が存在しているが、研究代表者はこれらの位置関係を明らかにするために、新規手法である、「位置プロファイル法」を開発した。この手法を海洋性シアノバクテリア14種のゲノムに適用した結果、これらのゲノム間に7つの保存領域が存在することが明らかになり、またその可視化にも成功した。本研究における保存領域の可視化によって、これらのコアゲノムによってゲノム再編成の様子を観察することが可能になった。この手法は多くのゲノムを比較する際に有利であるが、他方、糸状性ラン藻の2つのゲノム間の比較においても同様の構造を検出することができた。この可視化によって、糸状性シアノバクテリアのゲノムには保存領域と非保存的な領域がモザイク状に存在していることが明らかになったが、この様なモザイク構造は、ある種の糸状性シアノバクテリアが窒素飢餓状態に置かれた際、ゲノム上での遺伝子発現の活性化部位のモザイクと類似している所がある。このとき形成される異形細胞の形成は細胞分化の単純なモデルとして考えることができるが、この決定機構には、初め均質であった細胞群に細胞増殖等の過程で「ゆらぎ」が発生し、それが増幅されることによって細胞運命が決定される様な仕組みが考えられる。現在、この「ゆらぎ」がゲノムの非保存領域の性質に関連しているのではないかと考え、更なる解析を進めている。これらのことと、ゲノム構造と遺伝子活性化部位のモザイク構造を考慮すると、本研究によって得られる知見が、これまでのゲノム研究ではアプローチが難しかった、ゲノム構造と細胞分化との関連に一つの光を与えることが期待される。(716字)
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Research Products
(3 results)